毎週金曜日、19:30に更新中の腸内細菌相談室。室長の鈴木大輔がお届けします。
12月も中旬になり、例年に比べては暖かいですが、やっぱり少しずつ冬の訪れを感じる今日このごろ。インフルエンザが流行ったり、電車の暖房がついたり、厚着をしているところからも冬の訪れを感じます。寒くなってきたので暖房をつけたい一方で、電気代が高騰していることが頭をよぎります。そこで、基礎代謝量を上げるために、この冬から筋トレをはじめました。
筋トレの心強い見方は、プロテインです。私も毎日トレーニングの後にはホエイプロテインを摂取することを心がけています。そこで、ふとプロテインが与える腸内細菌叢への影響が気になりました。今回は、プロテインの中でもホエイプロテインに注目して、ホエイプロテインが与える腸内細菌叢への影響についてお話します。
腸内細菌相談室では、腸内細菌や腸内環境にまつわる研究結果を元に、最新の知見をお届けする番組です。継続的にエピソードを楽しむことで、腸内細菌について詳しくなることができるので、ぜひフォローをお願いします!
ホエイプロテインとは何でしょうか。森永製菓さんが"かんたん、わかる!"プロテインの教科書"というホームページを公開しているので、ホエイプロテインとは何か確認してみましょう。
ホエイプロテインは、牛乳から脂肪分やカゼイタンパク質を除いたタンパク質です。特徴としては、水に溶けやすいことや必須アミノ酸のバランスが良いことなどが挙げられています。
プロテインには、ホエイプロテインの他にも大豆由来のソイプロテインも存在します。
(2023年12月15日時点) Amazonで比較すると、ホエイプロテインは1000件以上ヒットするのに対して、ソイプロテインでは578件のヒットと、ホエイプロテインのほうが商品のバラエティに富んでいるようです。
British Journal of Nutritionに2022年掲載の"Comparison of the effect of soya protein and whey protein on body composition: a meta-analysis of randomised clinical trials"では、ホエイプロテインとソイプロテインの体組成 (脂肪を含まない体重:除脂肪体重、脂肪量、体脂肪率) へ与える影響のメタアナリシスが行われています。本研究では、スクリーニングの結果、10つの研究、596名を対象とした解析が行われています。解析の結果としては、ホエイプロテインの摂取は除脂肪体重の有意な増加と関連していたのに対して、ソイプロテインの摂取は除脂肪体重、脂肪量、体脂肪率の有意な変化とは関係しなかったとされています。除脂肪体重には筋肉の重量が含まれることから、ホエイプロテインが筋肉を増やす上で重要であることを示唆しています。しかし、除脂肪体重には骨、内蔵、血液の重量も含まれているので、解釈には注意が必要です。
現在私ははホエイプロテインを飲んでいます。好みにもよると思いますが、ソイプロテインと比較してホエイプロテインは飲みやすい印象です。
一方、どのようなタンパク質を摂取したいかという原材料に対する好み、アレルギーなどの体質もあるので、何のプロテインが良いかとは一概に決められません。
ここからは、ホエイプロテインが与える腸内細菌叢への影響について考えます。
今回は、論文2報の結果を俯瞰することで、ホエイプロテインが与える腸内細菌叢への影響を考えていきます。
メタアナリシスを含めた結果を素直に信じると、ホエイプロテインの摂取によって、除脂肪体重を増加させることができ、腸内細菌叢や腸内ウイルス叢が変化する一方、ホエイプロテイン+牛肉加水分解物のプロテイン摂取ではRoseburia、Blautia、Bifidobacterium longumなど健康に関係するとされる腸内細菌を減らしてしまうかもしれない、ということになります。被験者数や実験デザインの観点から少し穿った目で見ると、2報目は24人を分割した12人対12人の比較で、かつ普段から運動をしているヒトを対象としているので、代謝産物の量の変化が見えにくくなっているかもしれません。また、牛肉加水分解の影響も含まれているので、純粋なホエイプロテインの影響は見れていません。
総括すると、ホエイプロテインは腸内細菌叢、腸内ウイルス叢を変化させるが、細かい影響の調査にはさらなる研究が必要であると腸内細菌相談室は考えます。
ホエイプロテインと腸内細菌叢は関係は関係していそうだけど、まだ分かっていないことのほうが多い印象です。一方で、プロテイン摂取により消化管機能の変化を感じたり、体臭が変化したりというような体感を覚えるヒトが多いそうです。アミノ酸の塊を摂取しているようなものなので、ある意味匂いを発生する揮発性分子の材料を食べているとも言えます。この点、腸内環境の研究が進めば、消化管機能に優しいようなプロテインの開発が進むかもしれませんね。
最後にお知らせです。12/16(土)、下北沢にてポッドキャストのお祭り、ポッドキャストウィーケンドが開催されます。当日、腸内細菌相談室もスタッフとしていますので、もしお越しになる場合は一声かけてくださいね!
そして、今年もこの時期がやってきました。JAPAN PODCAST AWARDSです。本年で5回目の
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