毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、11/8-11/10の3日間に渡って開催されたInternational Human Microbiome Consortium 2022に参加してきたご報告です!日本語に直すならば、2022年ヒトマイクロバイオーム国際学会です。ここでは、IHMC2022と呼んでいきます。本大会は、2008年から続く世界最大規模のヒト細菌叢を取り扱う学会で、今回も大変盛況でした。学会ってどんなところなのか、何をするのか、どのように申し込むのか、どのようなことを知ることができるのか、このあたりについてお話していければと思います。
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx
学会。
私が研究を行うまでは馴染みの薄い言葉でした。きっと、研究に携わっている、あるいは携わったことのある方以外の人にとっては、どのような会なのかイメージが湧きづらいことと思います。まずは、学会の定義から導入します。ここでは、学会運営ジャーナル様の定義を引用させていただきます1*。
この定義を端的に話すと、研究者に対して研究成果を発表する場を用意し、あらたな知見を普及させ、議論を通して業界を盛り上げる場、といえそうです。ここには、論文化される前の研究成果も数多く集まっている点、研究者にとっては最新情報の宝庫であると言えるでしょう。
学会によっては、学会誌を持っており、ここに論文を投稿するなどの機能が備わっています。学会の運営は、各研究機関の研究者や、バックアップクルーによって支えられていることが多いです。
IHMC2022は、ヒトマイクロバイオーム、つまりヒトに住む細菌叢についての研究成果が国内外から集う国際学会です。この学会には、ヒトマイクロバイオーム研究を牽引するトップレベルの研究者や機関が集っています。
では、IHMC2022とはどのような会なのか、お話していきます。
今回行われたIHMC2022は、第9回目の開催です。過去には、ドイツ、カナダ、フランス、中国、ルクセンブルグ大公国、米国、アイルランド、スペインにて開催されました。
本会参加に必要なのは、事前のWeb上から申込みと入金です。参加費用は企業の方、学術関係の方、学生の方、あるいはオンラインやオフライン参加、早期申込か否かで異なります。例として、学術関係の方の参加費用は100000円でした。高い…! 通常、この費用は研究費用から捻出されます。ちなみにここまで高い学会参加費ははじめてでした。通常は1/5-1/10程度でしょう。IHMC2022は、学会会員になる等のオプションがないので、通常の学会とは異なるということも原因として考えられます。
また、2日目に開催されるホテルディナーは追加で10000円かかります。室長は、ここに参加することで色々な研究者と知り合えると思ったので、迷わず参加することにしました。こちらはポケットマネーです。
本会が行われたのは、神戸のポートアイランドにある、神戸ポートピアホテルです。多くの研究者は、一週間弱、このホテルに滞在して学会に臨みました。
開催日程は11/8(火)から11/10(木)の3日間でした。室長は、11/7のお昼に新幹線で新神戸についてからホテルにチェックインし、夜にオーストラリアの研究者と会食をしました。神戸を発ったのは11/10の夜20:00で、新幹線にて帰宅しました。
会期中は、朝から晩までタイムスケジュールがびっちりと組まれていました。一番ボリューミーだった2日目は、朝7:00から朝食を取り、モーニングセッションが始まり、ディナーで締めくくられたのが22:00でした。かなりヘトヘトになりましたが、研究に有用な多くの知見を得ることができました。
特に近年は、COVID-19の感染症拡大に伴い、オンライン方式での学会が多く、今回のIHMC2022は室長にとって久しぶりの対面形式の学会でした。ディナーの際には阿波おどりの団体が会場に入ってきてみんなで踊ったり、樽酒の鏡開きを行ったり、日本の文化でおもてなしをしていました。
セッションの種類は、プレゼンテーションとポスター発表です。プレゼンテーションでは、25分間の話のあとに質疑応答の時間が設けられていて、テーマごとにプレゼンテーションがまとまっています。テーマの節目にはコーヒーブレイクがあり、別会場にて研究にて話をしたり、雑談したりという感じです。ポスター発表には、毎日2時間程度時間が設けられていて、ポスターの前に立つ研究者と議論をとるという方式です。
会場の外には、協賛企業の出展ブースが設けられていて、以前お話したPacBioを始め、明治など様々な企業が出展していました。
続いて、この学会にて何を得てきたのかという点です。ネットワーキングから研究に重要な知見まで様々なのですが、ここでは今回面白かった研究発表出でてきた論文を列挙します。(発表前の知見もあるので、ここまでに留めざるをえないのです…)
細菌の量を相対量ではなく絶対量で考える研究: Quantitative microbiome profiling links gut community variation to microbial load, https://www.nature.com/articles/nature24460
COVID-19感染後症候群と腸内細菌叢の関係を調査: Gut microbiota dynamics in a prospective cohort of patients with post-acute COVID-19 syndrome, https://gut.bmj.com/content/71/3/544
乳幼児における腸内細菌叢の定着と動態: Dynamics and Stabilization of the Human Gut Microbiome during the First Year of Life, https://www.cell.com/cell-host-microbe/fulltext/S1931-3128(15)00162-6?_returnURL=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1931312815001626?showall=true
モノクローナル抗体IgAの腸内細菌叢制御: High-affinity monoclonal IgA regulates gut microbiota and prevents colitis in mice, https://www.nature.com/articles/nmicrobiol2016103
乳幼児における短鎖脂肪酸のプロファイルに影響をあたえる腸内細菌, Key bacterial taxa and metabolic pathways affecting gut short-chain fatty acid profiles in early life, https://www.nature.com/articles/s41396-021-00937-7
クローン病を特徴づける侵入性大腸菌, Invasive Escherichia coli are a feature of Crohn's disease, https://www.nature.com/articles/3700661
プロピオン酸が与える多発性硬化症への影響を免疫メカニズムから調査, Propionic Acid Shapes the Multiple Sclerosis Disease Course by an Immunomodulatory Mechanism, https://www.cell.com/cell/pdf/S0092-8674(20)30212-9.pdf
まだまだ沢山ありますが、今後腸内細菌相談室でお話しようとしている論文はこんな感じです。
今回は、"学会ってどんなところ?"という観点でお話をしてみました。1つ言えることは、普段は異なる場所で切磋琢磨をしている研究者が学会にて一堂に会したとき、皆とても楽しそうに話をしているというこことです。室長も、対面で色々な方と研究の内容から海外での生活に至るまで、様々共有できたのは非常に貴重な経験となりました。
今回は、IHMC2022の参加報告と、学会とはどんなところなのかについてお届けしました。
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1* 「学会」「学術集会」「学術大会」それぞれの意味や違いとは?
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