毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、大腸がんのわかっていることとして、大腸がんが発症し、進行するまでの遺伝子変異についてお届けします!前回は、大腸がんが世界において3番目、日本において1番目に多い罹患者のがんであり、日本での大腸がんによる死亡者は2位であることについてお届けしました。今回のエピソードは、社会における重要な医療課題である大腸がんについてわかっていることをまとめることを目的としてお話します!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
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まずは、大腸がんの好発部位と年齢についてお話します。そのために、腸の構造を復習するところから始めます。
腸は、胃の出口である幽門から始まり、肛門に至るまでの器官です。幽門から肛門までには、大きく分けて十二指腸、小腸、大腸に分けられます。ここまでは、良く聞く分類ですね。大腸がんも、この分類から名前が来ていますね。
しかし、腸には更に細かい分類があります。小腸は空腸と回腸、大腸は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸に分けられます。盲腸から直腸の順に、肛門へ近づきます。
中々細々としたお話をしてきましたが、大腸がんの好発部位は、結腸および直腸になります。これら、結腸および直腸の中でも、上皮細胞と呼ばれるもっとも管腔側の細胞について悪性腫瘍が生じることで起こる病気です。
好発年齢は50歳代から70歳代までで60歳代にピークがあるとされています。好発年齢は、大腸がんと診断されるヒトの年齢の分布を考えているに過ぎないので、他の年齢でも発症する可能性は十分にあります。遺伝的素因によって、若い時期に大腸がんを発がんする傾向もあります。
では、大腸がんをどのように発症するのでしょうか?
大腸がんが起こるには、上皮細胞のもつ遺伝子に複数の変異が蓄積されることで発症、進行するとされています。遺伝子変異の蓄積の経路には複数の経路が知られており、腺腫-癌連関(Adenoma-carcinoma sequence)と呼ばれる経路が主要です。
腺腫-癌連関とは、良性腫瘍からがん(悪性腫瘍)を経て、他の臓器に転移するという過程を経ます。この、腺腫ー癌連関は1988年にVogelstein博士が提唱した、大腸がんの"多段階発がん"モデルとして知られています。
大腸がんの多段階発がん過程では、がん抑制遺伝子であるAPC(Adenomatous Polyposis Coil)遺伝子やp53、膜貫通タンパク質をコードし条件によってがん抑制遺伝子となるDCC(Deleted in Colorectal Carcinoma)遺伝子、がん遺伝子のKRAS遺伝子への変異が確認されています。
これら遺伝子の詳細に深入りはしませんが、基本的には細胞の増殖に関連する遺伝子に変異が入ることで、細胞が異常なペースでポコポコと増えていくことで、大腸がんは進行していきます。
ここまでに、細かい大腸がん進行の過程を、遺伝子変異の観点から追ってきました。では、疫学的には大腸がんになりやすいヒトはどのような生活習慣を送っているヒトなのでしょうか。
次回は、大腸がんのリスクファクターについて詳しく解説していきます!以上、大腸がんが発症し、進行するまでの遺伝子変異についてお話しました。
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大腸がん、病気がみえる vol.1 消化器 第6版第2刷、株式会社メディックメディア、 208-221 (2020).
高山哲治, 中村文香, 大腸鋸歯状病変の診断と治療, 日本内科学会雑誌, 108(3), 445-451 (2019).
Vogelstein B, Fearon ER, Hamilton SR, Kern SE, Preisinger AC, Leppert M, Nakamura Y, White R, Smits AM, Bos JL., Genetic alterations during colorectal-tumor development. N Engl J Med., 319(9), 525-532 (1988).