#132 腸内細菌と大腸がんの関係。来週のテーマは、腸内細菌×〇〇!

更新日: 2023/01/08

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毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードでは、今週お話した大腸がんと腸内細菌の関係を復習するとともに、来週お話するエピソードの予告をしていきます!大腸がんは、世界および日本において高い罹患率のがんとして知られており、医療課題の1つとして重要です。大腸がんの発症について、分かっていることといないことがあるので、今回のエピソードを通して確認していきましょう!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx

高い罹患率の大腸がん

まずは大腸がんの統計から復習していきます。日本では、統計上生涯を通して男性の1/2、女性の1/3ががんに罹るとされています。大腸がんは、日本のがんにおいて一番罹患者が多いがんであり、二番目に死亡者が多いがんです。もしかすると、皆様のまわりにも大腸がんや大腸ポリープをもつ人がいるかもしれません。大腸がんのお話は、現代社会を生きる日本人にとって、決して他人事ではありません。

そんな大腸がんはどのように発症するのでしょうか。そもそも、がんとは特定の遺伝子に変異が入ることで細胞増殖機能に異常が生じて、異型な細胞がどんどん増えていく病気です。細胞が増えてある条件を満たすことで、血流やリンパ節にがん細胞が侵入し、転移をするという過程を取ります。

大腸がんの発症と進展については、1988年にVogelstein博士が腺腫-癌連関と呼ばれるモデルを提唱しており、がんに関連する遺伝子の変異の蓄積により腫瘍の悪性度が高まっていくとされています。

大腸がんのリスクファクター

遺伝子の変異まで明らかになってきている大腸がん。できれば自分は罹患したくないですし、周りの人にも罹患してほしくは有りません。そこで、リスクファクターを把握しておくことが大切です。

大腸がんの発症リスクは、遺伝的要因、家族性要因、環境要因により変化することが知られています。遺伝的要因とは、両親から生まれ持って引き継ぐ遺伝子の変異に由来する要因、家族性要因とは変異の入った遺伝子が定かではないが同一家系に大腸がん罹患者が多いという状況から食生活等の状況が似ていることで高まるとされる要因、環境要因とは生活習慣を始めとする腸内環境を取り巻く要因です。特に、大腸がんの半数以上は散発性大腸がん、つまり遺伝的要因や家族性要因が確認されなかった人に認められる大腸がんであることが知られています。したがって、環境要因についての把握が重要となります。

環境要因としては、食生活や運動習慣などが考えられています。
関連して、リスクファクターとなりうるのは赤身肉や加工肉、アルコール摂取、肥満、喫煙習慣などが確認されています。これらは、できるだけ控えたほうが、大腸がんの発症リスクを減らせる点では良いということです。

大腸がんと腸内細菌叢

実際の大腸がんは、遺伝的要因、家族性要因、環境要因が相互に関連しながら発症につながると考えられています。そして、私達が制御できるのは生活習慣などの環境要因について、リスクファクターを減らすということになるので、食習慣や運動習慣を整えることが大切になるのです。

大腸がんの3つの要因について紹介しましたが、実はこれらと密接に関連するものがあります。それが、腸内細菌叢です。

大腸がんの進行に伴って増加する腸内細菌としては、F. nucleatum、Parvinmonas micra、Peptostreptococcus stomatis、Peptostreptococcus Anaerobius、Actinomyces odontolyticus、Solobacterium moorei、Gemella morbillorumが知られています。

中でもF. nucleatum(ヌクレアタム菌)は2012年から盛んに研究されている細菌で、腸内細菌というよりは口腔常在菌です。この細菌は、歯周炎に関係するとされており、口腔から血流にヌクレアタム菌が乗ることで一時的な菌血症になり、血流を介して腸内に定着するなどの感染経路が考えられています。

ヌクレアタム菌には細胞に接着タンパク質を有しており、大腸がんの細胞と接着することで上皮細胞に侵入し、がん細胞の増殖や炎症の惹起に関係することが示唆されています。またT細胞に対して作用することで、がん免疫を抑制することも示唆されています。

以上が、大腸がんと腸内細菌叢は密接に関係というお話の概要です。とはいってもわからないことも数多くあるので、これからの研究に期待です。

来週のテーマ

では、大腸がんの発症に関係するとされる腸内細菌に由来する要因はあるのでしょうか。例えば、コリバクチンが該当します。コリバクチンとは、遺伝毒性を持つ物質で、特定の大腸菌が産生することで知られています。

ということで、来週のテーマは、コリバクチンに関連する研究です!ご期待ください!そして、良い日曜日をお過ごしください!

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