現役の腸内細菌研究者がお届けする、腸内細菌相談室。
室長の鈴木大輔がお届けします。
今回と次回のテーマは、人工甘味料を摂取することで生じてしまう下痢を、プロバイオティクスにより抑制できるかもしれない、という研究です。もちろん、ここで紹介していると言うことは、人工甘味料と下痢の間に、腸内細菌が何らかの役目を担っているということです。特に、今回は人工甘味料の基礎についてお話できればと思います。
人工甘味料の歴史から、今回の研究につながるお話を優しくお届けしていきます。ぜひ最後まで、お付き合い下さい。
この記事の内容は、ポッドキャストからもお楽しみ頂けます。
甘いものは、古くから人類を誘惑してきました。というのも、食料が簡単に手に入らなかった時代は、糖は貴重だったため、人間にとって有益なものであると仕込まれているのです。糖尿病が存在するのもこのためで、血糖値を上げる仕組みは多数存在しますが、血糖値を下げる仕組みはインスリンによっての代謝のみになっています
甘いものは食べたいけど、カロリーは減らしたい。こんな思いを叶えるべく、サッカリンやアスパルテームなどの人工甘味料は開発されました。一時期、人工甘味料の安全性と発がん性が疑われましたが、現在はその懸念は払拭されており、ありとあらゆるところに人工甘味料が添加されています。
では、人工甘味料はなぜ甘く、そして血糖値を上げないのでしょうか。
人工甘味料が甘いのは、シンプルな理由で、ヒトが甘みを感じるような分子の構造をしているからです。それ以上でもそれ以下でも有りません。
人間の舌は本来、グルコースなどの分子に対して甘みを感じ、快感を覚えるように設計されています。しかし、ヒトが甘みを感じる分子の構造は意外と幅広いことが現在では知られています。つまり、人工甘味料はヒトの舌を騙して、甘くて有益なものと感じさせているわけです。
ちなみに、舌の細胞外に受容体がポケットのように配置されており、このポケットに分子が受け入れられることで甘みを感じる仕組みです。
本来、ブドウ糖を摂取した場合は、以下の流れによって血糖値を上昇させ、フィードバック機構によって今度は下降します。
これに対して、人工甘味料中にはグルコース、つまりブドウ糖の構造が含まれないので、そもそも血糖値が上がるわけも無いのです。
私達の腸内細菌叢は、人工甘味料と本物の砂糖とでは異なる反応を示します。これらの微生物は、人工甘味料にさらされればさらされるほど、本物の糖を分解することができなくなることが、マウスの実験によって分かっています (J. Suez et al., 2014, Nature 514:181–6. doi: 10.1038/nature13793)。
また、人工甘味料のソルビトールやマンニトールに含まれる構造の糖アルコールの過剰摂取は、軟便や体重減少を伴う下痢を引き起こすことが知られているのです。
人工甘味料に対して代謝のすべを持っていない私達人類。
そこで反旗を翻すのが、腸内細菌なのです。
次回、腸内細菌、人工甘味料をぶっ壊す!
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