#55 これから腸活を始めたい。そんなあなたへ贈る記事。

更新日: 2022/10/16

一覧へ戻る

現役の腸内細菌研究者がお届けする腸内細菌相談室。
室長の鈴木大輔です。

今回は、腸活についてのお話です。できれば、腸活を行う前のあなたに見てほしい、そんな内容の記事となっております。皆様の腸活に、少しでも参考になればと思います。

この内容は、ポッドキャストでもお楽しみ頂けます。

腸活とはどのような活動か。

まずは、これからお話する腸活とは何か、定義することで明確にしておきましょう。

健康や身体の不調を克服することを目的として、乳酸菌飲料や発酵食品などのプロバイオティクスを摂取したり生活習慣を改善する継続的な活動

「#22 腸活って何だろう? 15の研究を眺めた答え。」より

この定義については、以前お話したエピソードにて詳しく紹介してあります。様々な研究の事例を取り上げ、腸活について考えました。

https://note.com/chonai_saikin/n/n641beb48b92c

別の角度からこの定義について反芻します。まず、「健康や身体の不調を克服する」といった目的意識があるのは、腸活の大前提です。その目的を意識して行動を継続することが大切です。

ここでは、この定義の欠点を突きます。それは、目的達成のためにどのような行動を取れば良いか教えてくれない点です。換言すると、行動指針がないので目的達成に向けて順調に歩んでいるのか分からないのです。

では、個人の体験談を参考に腸活を行うのでしょうか?
それでは不十分です。この点については、後半にお話します。

腸活は最先端の科学に対する素養を必要とする。

ここではあえて、腸活に対する敷居を少し高めます (あまり心配しないで下さい、難しくても行動に移す方法はあります)。

語弊を恐れずに腸活を表現すると、腸内環境や腸内細菌をハッキングする行為です。食生活や生活習慣、プロバイオティクスなどの介入によって、腸内環境や腸内細菌叢を変化させようとするのが、腸活だからです。

では、腸内環境や腸内細菌叢が、そんな簡単に変化するのでしょうか?
お気付きの通り、意図的な方向に簡単に変化させるのは、現在の技術ではできません。腸内細菌叢に対する理解が深まり始めたのは、ここ15年位の話です。

それに対して、私達の多くは15年以上生きてきました。15年以上の生活の上に、ある種淘汰されたのが現在の腸内環境なのです。言い換えると、今の私達の腸内環境は、私達の生活習慣や生活環境の影響の結果の上に成り立っています。腸活は、今までの生活習慣や環境と向き合う作業です。

そこで、15年位の研究成果を利用しながら、今までの生活習慣や環境と向き合うというのが、腸活への現時点での正攻法になりそうです。

今までの生活習慣や環境と向き合うのは、例えば食生活の不摂生を改善する、自分に取っての最適な睡眠時間を調べる、服用する薬について理解する、などできることは様々。

一方、ここまでの研究成果を利用するというのは、一筋縄にはいきません。論文を読むのは2つの意味で大変だからです。

  • 1つ目は、読むこと自体に労力がかかる意味で大変です。時間がかかるし、英単語と英文読解が必要です。

  • 2つ目は、かなり大量の周辺知識が必要という意味で大変です。腸内環境の理解には、解剖学、病理学、免疫学、神経学などの理解が必要です。腸内細菌叢の理解には、微生物学、分子生物学、毒性学、生化学などの理解が必要です。研究デザインの理解には、統計学、疫学、研究倫理に対する理解が必要です。(※各分野に重複はあります。例:統計学的手法は疫学の解析に利用されるなど。)

つまり、研究者の知見を自身の腸活に利用しようとしても、内容の理解に対して求められる敷居が高すぎるのです。ちなみに腸内細菌相談室は、この敷居を低くするために存在しています。

では、専門意見を鵜呑みにして良いの?

かといって、研究について簡単に説明された鵜呑みにしてもよいのか?というとそうでもないです。もちろん、研究者自身や同業者などの専門家が解説している場合には一定程度信頼できます。

しかし、SNS上には専門家らしいひとが沢山存在するのも事実で、個人的な見解と論文の事実が混同されている場合もしばしば。(ちょっと辛辣)
個人の見解と事実の切り分けは、非常に大切で私自身もできるだけこのミスが無いよう気をつけています。

私は個人的に、「専門家になりすまして自分の利益に誘導するような行為を看過してはいけない」と考えています。

この現状は、研究者側にも責任の一端があって、適切な情報発信を専門家ではない方に向けて積極的に行う必要があると考えています

また、専門家として発信するのであれば、謙虚になり、発言の根拠を考え責任はしっかり負っていこーぜ、といった感じです。

そして、情報の受け取り手は、その情報の根拠があるのか半信半疑で受け取ることが大切です。情報は玉石混交であり、論文自体の主張も人間によって生成されていることすら考慮するべきだと考えています。

情報があふれる腸活への警鐘

情報の受け取り手である皆様には、エビデンスベースで考えていただき、情報を精査する目を養って頂ければと思います。これは簡単ではなく、勉強だって必要です。

でも、無目的な勉強ではなく、健康や身体の不調を克服するための勉強です。

最後に、腸活に関する情報の真偽を見極める上での視点を列挙します。

  • その記述は個人の経験や意見か、論文など外に根拠があるものか。個人の経験である場合は、あなたの体でも同じことが起きるとは限りません。個人の意見である場合、精査されていない恐れがあります。

  • 論文など外に根拠がある場合、それはいつ、誰の、どのような方法により取得した情報か。古い情報の場合、出どころが分からない場合、不適切なサンプリングや解析手法の場合、真偽の判断が難しいです。

今回は、腸活をこれからはじめる、そんなあなたに向けて記事を書いてみました。とはいっても、1人で勉強したり調査するのは心細いですよね。

そんなあなたのために腸内細菌相談室は存在します。何か分からないことがあれば、気軽にメッセージを送って下さい!Twitter、Instagram、Noteコメント欄、どこでもお待ちしております。

こちらがTwitterです!

https://twitter.com/chonai_saikin

こちらがInstagramです!フォローお待ちしております!

https://www.instagram.com/chonai_saikin/

それでは、本日も一日、お疲れさまでした。

一覧へ戻る