毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今日から一週間は、腸内細菌叢と生活習慣の関係についてのお話をしていきます!週の前半は、運動、週の後半は睡眠や飲酒、喫煙についてのお話をしていきます。今回のエピソードでは、筋トレを行った参加者の腸内細菌叢を調査する、"Impact of Different Exercise Modalities on the Human Gut Microbiome"という研究についてご紹介します!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx
本研究では、筋トレなどの運動が与える腸内細菌叢への影響を評価するために、レジスタンストレーニングと心肺運動負荷試験を行っています。レジスタンストレーニングとは、筋肉に一定の負荷をかけるトレーニングで、筋トレの一種です。一方の心肺運動負荷試験は、自転車を漕ぐ運動を通して血圧などの計測を行う試験です。
これらの運動について、それぞれ8週間行う参加者を募集したところ、レジスタンストレーニングと心肺運動負荷試験にそれぞれ28名が登録しました。運動習慣の開始前、継続中、終了後の糞便を定期的に採取し、腸内細菌叢の推移を調査しました。
研究チームは、腸内細菌叢の変化を、多様性尺度の観点から調査しました。
調査の結果、レジスタンストレーニングによる腸内細菌叢の検出可能な変化は確認されませんでした。また、心肺運動負荷試験による腸内細菌叢の変化は、運動初期には確認されたものの、その後変化の持続は確認されませんでした。
一方で、運動による身体能力の向上については、腸内細菌叢との関連が確認されています。身体能力の向上の評価は、反復して持ち上げることのできる重さによる負荷の指標である、Repetition maximumによって測定されました。例えば、めちゃめちゃ重いダンベルを持ちながらスクワットできた回数を2回とする場合には、RMが2となります。筋トレによって筋力が鍛えられ、スクワットできた回数が5回となった場合、RMが5となります。
この手法によって評価すると、参加者の元々保有していた腸内細菌叢について、Ruminococcusなど特定の細菌が多いと運動効果が高いという関連性が示されました。一方、Siccibacter属など特定の細菌が多いと運動効果が少ないという関連性も示されました。
このように、同じ運動を行ったとしても、腸内細菌叢によって効果が異なるということが示唆されたのは面白いですね。
この論文では、運動と腸内細菌叢の関係を調査するために、レジスタンストレーニングと心肺運動負荷試験、糞便中の腸内細菌叢解析を行いました。結果、運動の介入による腸内細菌叢の変化は、心肺運動負荷試験の初期にのみ観測されたものの、両方の試験で持続的な変化は確認されませんでした。一方、運動によって得られる効果については、特定の細菌の存在量と関係することが示唆されました。
今回の研究では、運動による腸内細菌叢への明確な影響は観測されませんでした。一方で、腸内細菌叢が与える運動への影響が示唆されたというのは面白いですね。運動と腸内細菌叢の関係解明はまだ始まったばかり!今後に期待です。
以上、筋トレによる腸内細菌叢の変化をレジスタンストレーニングの例からお話しました!
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Bycura D, Santos AC, Shiffer A, Kyman S, Winfree K, Sutliffe J, Pearson T, Sonderegger D, Cope E, Caporaso JG. Impact of Different Exercise Modalities on the Human Gut Microbiome. Sports (Basel). 2021 Jan 21;9(2):14. doi: 10.3390/sports9020014. PMID: 33494210; PMCID: PMC7909775.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7909775/