毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードから、1週間に渡ってバイオフィルムと腸内細菌に関するお話をしていきます。バイオフィルムという言葉は、生物系の学問に触れたことのある人であれば、1度は聞いたことがある専門用語だと思いますが、一般には普及していない単語でもあります。今回、バイオフィルムをテーマとして採用した理由は、ヒトと細菌の関係を語る上で不可欠な構造であること、ヒトの疾患に関係することが挙げられます。これらの話は今週後半にお話するとして、まずはバイオフィルムとは何かお話していきます!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx
まずはバイオフィルムとは何かからお話していきます。バイオフィルムの定義を、厚生労働省監修のe-ヘルスネットから引用します。
めちゃめちゃシンプルな定義です。固体表面に存在する、微生物の集合体がバイオフィルムです。日本語で表現すると生物膜となる通り、微生物が固体表面を覆うように存在することから、この名前がついています。
また、腸内細菌学会の提供するバイオフィルムの定義も確認してみましょう。
微生物の集合体であることに、違いはありませんが、①微生物が産生する物質が含まれること、②構造体の総称であること、という要素が付け足されています。
バイオフィルムを形成する細菌は、粘着性の菌体外多糖類、タンパク質、DNAの分泌を通して微生物自身を被覆し、バイオフィルム外とは全く異なる環境を形成することで知られています1)。では、バイオフィルムはどのようなところに観察されるのでしょうか。
答えは、水のあるところにはどこにでも存在します。水の惑星である地球のほぼ全域に存在するといっても過言ではありません。したがって、地球環境の構成員であるあなたにも、バイオフィルムはもちろん存在することになります。
代表例は、歯垢(プラーク)です。固体である歯の表面に細菌が集積し、菌体外多糖類(グリコカリックス)で自身を覆うことによって、抗生物質や抗体、界面活性剤に抵抗性があるバイオフィルムを形成します。歯垢が石灰化したものが歯石になりますが、歯石の除去は歯医者での処置が必要になるほど厄介です。また、歯垢を取り除くには機械的な破壊が効果的です2)。そして、歯垢の機械的な破壊に効果的なのが、習慣的に皆さんが行っている歯磨きなのです。歯磨きをしないと、歯垢は歯石となり、口腔環境が悪化するとともに、う蝕(虫歯)や歯周炎の原因となります。
歯垢以外にも、身近な例では水垢、水道管のぬめりとして観察されたり、人工臓器の表面に存在することで感染症の原因となることで知られています。また、バイオフィルムは金属の腐食にも関係し、製品寿命を短くすることでも知られています。
このように、水のあるところに存在するバイオフィルムですが、バイオフィルム内の細菌同士であたかも話しているかのようにコミュニケーションをすることが知られています。次回は、バイオフィルムでの細菌間のコミュニケーションについてお話します!
以上、バイオフィルムとは何かというお話でした!
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本日も一日、お疲れさまでした。
1) 用語集 宮本潤基、腸内細菌学会, Access: 2023/1/23, URL: https://bifidus-fund.jp/keyword/kw083.shtml
2) e-ヘルスネット、厚生労働省
Access: 2023/1/23
URL: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-023.html