#113 持久系トレーニングの与える腸内環境への影響。Frontiers in Nutritionのレビュー論文から。

更新日: 2022/12/13

一覧へ戻る

毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

この度は、新型コロナウイルス感染症に罹っており、Noteとポッドキャストを一週間お休みしておりました。お心配をおかけしました。

Note、Twitter、Instagramにて様々な方にお声掛けいただき、励みになりました。症状としては、嗅覚障害と鼻詰まり程度だったので、特に辛いことはなく、1週間を過ごしてきました。ここから気分新たに、腸内細菌や腸内環境に関する投稿を再開しますのでお付き合い下さいませ!

今回のエピソードでは、前回に引き続き運動と腸内環境の関係についてお話します。特に、運動の中でも、今回は持久系トレーニングと腸内環境の関係についてまとめたレビュー論文に基づいてお話します。レビュー論文とは、ある分野やテーマについて論文をかき集め、知見をまとめ上げ、相互に比較するタイプの論文です。ですから、オリジナルな検証実験は含まれていないことが多いです。今回の研究は、Frontiers in Nutritionの"Interplay Between Exercise and Gut Microbiome in the Context of Human Health and Performance"という論文にまとめられています。

では、運動と腸内環境の関係について、前回とは別の角度から迫ってみましょう!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx

心肺フィットネスと腸内環境

運動の程度によって、腸内環境や健康に与える影響が異なることが、考えられています。例えば、適度な運動は炎症や腸管透過性を低下させ、健康維持に関連するとされています。一方、激しい運動は腸管透過性を高めて腸管の粘液層の厚さが減少し、病原性細菌の血液への流入とそれに伴う炎症反応が起こる可能性があります。

運動の一例として、心肺フィットネスを使う運動について考えてみます。心肺フィットネスとは、呼吸系と循環系による酸素の供給能力をさし、これらを使う運動としてはエアロバイクや持久走が考えられます。心肺フィットネスに関する運動量が増加するに伴って、腸内細菌叢の多様性や短鎖脂肪酸の産生菌が増加すると考えられています。一方、運動量が不足している場合には、腸内におけるE. faecalisなどの病原性細菌の量が多くなる傾向にあります。

アスリートと腸内環境

続いて、アスリートにおける腸内細菌叢についても考えてみます。最新の研究では、アスリートには固有の多様性が高い腸内細菌叢が存在することが示唆されています。これらの腸内細菌叢は、アミノ酸の生合成や炭水化物、食物繊維の代謝、短鎖脂肪酸の生産に関連しているようです。

さらに、これらの細菌種は食物繊維の発酵を通してアスリートに良い影響を与えることが示唆されています。サイクリングのアスリートに対して行われた研究では、Prevotellaの高い存在量と平均運動時間の間に有意な相関があったことが確認されています。

注意点として、アスリートと一般人の腸内環境が異なるのは、運動習慣もさることながら、食事を始めとした生活習慣が異なるのも要因として大きいです。

げっ歯類を用いた動物研究では、運動から腸内細菌叢への影響のみならず腸内細菌叢から運動への影響についても考えられています。このことは、腸内細菌叢と運動が相互に関係することを示唆しています。

このレビュー論文では何を言いたかったのか。

では最後に、このレビュー論文では何を言いたかったのかまとめてみます。

近年の研究から、腸内細菌叢と運動の関係を明らかにする報告が集まってきました。本研究では、持久系トレーニングに関連する研究の知見をまとめたところ、適度な運動により腸管透過性を低下させ免疫機能として健全な状態に体を保ち、短鎖脂肪酸の産生菌が増加するということです。また、アスリートに固有の細菌叢が知られており、アスリートにとって重要な栄養の合成にも関与しているとのことでした。

以前#99でお話したAuB株式会社は、アスリートの腸内細菌叢に着目した会社ですが、今後運動の補助としてのプロバイオティクスやプレバイオティクスが一般的な時代が来るかもしれませんね!

以上、持久系トレーニングの与える腸内環境への影響について、Frontiers in Nutritionのレビュー論文からお届けしました!

この度、第4回 JAPAN PODCAST AWARDSのリスナー投票が始まりました!もし面白いと思って頂けたら、投票していただけるととってもウレシイです…!🧬🧑‍🔬🦠皆様と一緒に、腸内細菌、腸内環境の知識を常識にしていきたいです。投票フォームは、以下のリンクから! 投票の名前は、「腸内細菌相談室」でお願いします!ご協力お願いします…!

https://ssl.1242.com/aplform/form/aplform.php?fcode=jpa2022_listener

腸内細菌相談室は、腸内細菌について分からないことがある、あなたのために存在します!わからないこと、難しいこと、紹介してほしいことがあれば、メッセージお待ちしております。論文の紹介から、基礎知識の解説まで、腸内細菌相談室を使い倒して下さい!あなたのリクエストが番組になります。

こちらがTwitterです!

https://twitter.com/chonai_saikin

インスタグラムはこちらです!

https://www.instagram.com/chonai_saikin

本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

Clauss Matthieu, Gérard Philippe, Mosca Alexis, Leclerc Marion (2021), Interplay Between Exercise and Gut Microbiome in the Context of Human Health and Performance, Frontiers in Nutrition, 8 https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2021.637010

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2021.637010/full

カテゴリー

一覧へ戻る