毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、遺伝毒性、変異原性という突然変異を誘発する性質についてご紹介します。この性質に対する理解が、腸内細菌が産生する遺伝毒性物質であるコリバクチンへのお話につながってきます!それでは早速、本編に移りましょう!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
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まずは、昨日のエピソードでお話した突然変異の復習を します。National Human Genome Research Instituteの定義によると、突然変異とは、生物のDNA配列が変化することを指します。
突然変異によってDNA配列が変化することで、ある時は生存に影響が出ず、あるときには致命的な影響が生じることをお話しました。遺伝情報を記録しているのは、DNAという物質に過ぎないので、化学変化をすることを考えれば、遺伝情報は動的であると考えられると思います。
DNA配列に対して突然変異を引き起こすのは、やはり物質です。反応性が高い物質や、配列を複製したり修復したりする物質が、突然変異を引き起こします。
特に、反応性の高い物質は無差別的にDNAを損傷することから、DNAに対しての毒性が高いといえます。ここで、DNAや染色体に対する毒性として、遺伝毒性(Genotoxicity)という言葉を導入します。
遺伝毒性の説明を国立医薬品食品衛生研究所・変異遺伝部の解説から引用します。
ここでは、外来性や内因性の要因によってDNA、染色体、遺伝情報に関連するタンパク質が作用を受け、結果としてDNAや染色体の構造、量を変化させる性質と説明されています。本定義を執筆した本間先生は、遺伝毒性はメカニズムであるとしており、それ自体に毒性の実態は無いとしています。
これは、突然変異そのものが生存への良し悪しに関係するわけではなく、結果論として毒性が生じるという前回の説明に通じる点となります。
遺伝毒性と似た概念として、変異原性(Mutagenicity)と呼ばれる性質もあります。こちらも、国立医薬品食品衛生研究所・変異遺伝部の解説から引用します。
遺伝毒性はDNAや染色体の量、構造を変化させる性質であるのに対して、変異原性はその変化が不可逆的、永続的であり、修復されずに次世代の細胞や子孫に引き継がれるとしています。
したがって、生存に対して重大な影響を与えうるのは、変異原性ということになります。今後お話していくのは、遺伝毒性物質です。つまり、単にDNAの量や構造変化を引き起こす物質となります。遺伝毒性物質の中には、変異原性の物質も含まれ、不可逆的なDNA損傷を誘発することになります。
最後に、遺伝毒性物質の例を挙げます。遺伝毒性物質としては、多環芳香族炭化水素、アルキル化剤、ニトロソアミン、ハロゲン化有機化合物としてのPCBs、ダイオキシン、塩素系溶剤、殺虫剤、遷移金属や重金属、ヒ素などが考えられています。聞いたことがある物質からそうでない物質まで様々です。ダイオキシンや重金属は有名ですね。
これらの物質がもつ遺伝毒性によって、一定の確率でがん化が誘発されることから、発がん性物質と呼ばれたりします。そして、これらの仲間にコリバクチンが含まれます。
明日は、コリバクチンについてゆっくり解説していきます!
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遺伝毒性概要、令和元年8月、国立医薬品食品衛生研究所・変異遺伝部、前部長 本間正充、Access: 2023/01/10、URL:https://www.nihs.go.jp/dgm/genotoxicitytest2R.html
C W Theodorakis. Mutagenesis. In Sven Erik Jørgensen and Brian D. Fath (Editor-in-Chief),Ecotoxicology. Vol. [3] of Encyclopedia of Ecology, 5 vols.pp. [2475-2484] Oxford: Elsevier,https://www.researchgate.net/figure/Examples-of-common-mutagenic-and-genotoxic-chemicals-their-sources-in-the-environment_tbl1_264194569