#208 【便秘集中講義】第12回:イヌリンで便秘を改善する。

更新日: 2023/03/25

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便秘集中講義の第12回から、プレバイオティクスと便秘の関係について最新の研究成果をご紹介します。今回は、プレバイオティクスでも非常に有名なイヌリンについて、健康や疾患との関係をまとめたレビュー論文からお話をします。2023年2月17日に発表された本論文は、Food & Functionの"Inulin: properties and health benefits"からご確認出来ます。

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イヌリン

イヌリンは、チコリやごぼう、玉ねぎ等に含まれる水溶性食物繊維の一種です1)。イヌリンの利用用途は幅広く、甘味料や添加物として使用されています2)。イヌリンはBifidobacterium属を増加させるのみならず、分解過程で酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が産生されます2)。

現在は、プレバイオティクスの文脈でイヌリンの腸内細菌叢、腸内環境へ与える影響が注目されています。そんな中で、便秘の方に対してイヌリンを投与した研究は数多くあり、今回紹介のレビュー論文でもその一部がまとめられています。

イヌリンの与える便秘への影響

イヌリンの摂取源としては、チコリーに由来するイヌリン、イヌリン型のフルクタン(フルクトース分子の重合体)、アガベ由来のイヌリンとLactobacillus reuteri DSM 17 938の併用(シンバイオティクス)などです。

摂取量は、チコリー由来のイヌリンの場合、10 g/dayから20 g/day程度で、期間は4週間から14週間までとなっております。

対象者は、便秘に悩む50-70歳の方、40-75歳の方、便秘の症状がある健康の方、便秘の子供、脳性麻痺による便秘の子供など様々です。

以上の集団については、いずれにおいてもイヌリンの摂取によって便秘症状の改善が見られる場合と効果が確認できない場合、腸にガスが溜まった鼓腸になる場合があることが報告されており、一貫した解釈が難しい状況です。

15 g/day以上のイヌリンの摂取は、鼓腸や腹部膨満感になる可能性があります。便秘の参加者においては、便秘の回数と硬さについて改善する傾向にはあるとのことなので、とりすぎには気をつけながら定期的に摂取するのが良いと考えられます。

室長個人の見解としては、ゴボウや玉ねぎなど、日々の料理に取りれやすい野菜を活用して、自然にイヌリンを摂取することが、イヌリン摂取の第一歩だと考えています。安易にサプリメントに走らず、着実に食生活を見直して変えていくことが、便秘を長い目で解消する1つの方法論であると信じています。

以上、イヌリンで便秘を改善することを試みた研究についてご紹介しました!

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参考文献

Qin, Yu-Qing et al. “Inulin: properties and health benefits.” Food & function, 10.1039/d2fo01096h. 6 Mar. 2023, doi:10.1039/d2fo01096h

1) 水溶性食物繊維イヌリン、株式会社明治、Access: 2023/3/20、URL: https://www.meiji.co.jp/dairies/inulin/

2) 浅桐 公男, Inulin:イヌリン, 外科と代謝・栄養, 2020, 54 巻, 3 号, p. 160-161.

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