#131 大腸がんの進展に伴って増加する腸内細菌について。

更新日: 2023/01/07

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毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードは、大腸がんの有無や進展に伴って増加する腸内細菌についてお話します。前回までに、大腸がん組織に多く検出されるF. nucleatum(ヌクレアタム菌)が、細胞の接着タンパク質を介して大腸がんの上皮細胞に接着、侵入するメカニズムなど、かなりマニアックなお話をしてきました。今回は視野を広げて、ヌクレアタム菌以外に大腸がんと関係があるとされる細菌を取り上げていきます!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx

大腸がんの進展に伴って増加する腸内細菌

まずは、日本のコホートを対象にした研究を取り上げます。健常者と、異なるステージの大腸がん患者の腸内細菌を調査したところ、F. nucleatumの他に、Parvinmonas micra、Peptostreptococcus stomatis、Peptostreptococcus Anaerobius、Actinomyces odontolyticus、Solobacterium moorei、Gemella morbillorumの相対存在量が増加することが確認されました※1。また、大腸がんの進展に伴って減少する細菌種も確認されており、Lachnospira multiparaは大腸がんになると相対存在量が減少し、Eubacterium eligensとBifidobacterium longumはStage 0の患者において減少することが確認されています※1。また、Stage 0で増加する細菌としてAtopobium parvulum、 Actinomyces odontolyticusが知られています。細菌叢の網羅的解析によって、大腸がんにはF. nucleatumだけでなく多くの細菌が関係していると考えられるようになりました。

他国のコホートでも類似の傾向がみられる

日本のコホートに引き続いて、他国のコホートについてお話します。例えば、中国のコホートではF. nucleatum、P. micra、P. stomatis、S. mooreiなどの、日本のコホートと共通する細菌種が大腸がん患者の腸内において多くなっていることが確認されました※2。

また、ドイツのコホートでは、大腸がん患者においてF. nucleatum、P. stomatis、Porphyromonas asaccharolyticaなどの細菌の存在量が増加していました※3。

Tsoiらの中国のコホートにおける調査では、細菌の機能を更に詳細に解析しており、大腸がん患者に多く確認されるP. anaerobiusに曝露された細胞では活性酸素種が増加し、コレステロール合成と細胞増殖が促進されることが示唆されてます※4。これは、細胞に対する酸化ストレスの増加や、細胞の増殖機能に腸内細菌が影響を与えていることを裏付ける1つのエビデンスです。

大腸がんと腸内細菌叢の関係については未だ分かっていないことが沢山ある

ここまでに、大腸がんと腸内環境の関係について、基礎から詳しく解説してきました。本日は、多くの細菌が大腸がんの進展へ関与することが考えられ始めていることをお話しました。

しかし、大腸がんと腸内細菌叢の関係についてはまだ分かっていないことが多くあり、未開拓領域の多い研究分野です。今後、胃がんの除菌洗浄のように、大腸がん原因菌が特定されれば、大腸がんが治療の新しい方法が開発される可能性もあります。今後の研究に期待です。というか、私自身もこの分野に少しでも貢献できるように、研究に精進します!

以上、大腸がんの進展に伴って増加する、ヌクレアタム菌以外の細菌についてお話をしてきました。

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本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

  1. Yachida S et al., Metagenomic and metabolomic analyses reveal distinct stage-specific phenotypes of the gut microbiota in colorectal cancer. Nat Med., 25(6), 968-976 (2019). 

  2. Yu J et al, Metagenomic analysis of faecal microbiome as a tool towards targeted non-invasive biomarkers for colorectal cancer. Gut, 66, 70-78 (2017).

  3. Zeller G et al., Potential of fecal microbiota for early-stage detection of colorectal cancer. Mol Syst Biol., 10(11), 766 (2014).

  4. Ho Tsoi et al., Peptostreptococcus anaerobius Induces Intracellular Cholesterol Biosynthesis in Colon Cells to Induce Proliferation and Causes Dysplasia in Mice. Gastroenterology, 152(6), 1419-1433.e5 (2017).

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