現役の腸内細菌研究者がお届けする腸内細菌相談室。
今日も、鈴木大輔がお届けします。
本日は「日本人にとっては馴染みの深い納豆が、肥満を抑えられるかもしれない」という研究を紹介します。
納豆が健康に良い!ということは、色々なメディアで取り上げられ、常識として定着しつつあります。日本の誇るべき発酵食品です。今回は、納豆を機能性の食品として取り上げます。
この内容は、ポッドキャストでもお楽しみ頂けます!
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この研究の概要はシンプルです。高脂肪食の肥満マウスに対して、納豆菌を摂取させます。8週間の投与後、体や腸内環境にどのような変化があるのか、ということを調べています。
ここで、納豆菌とは俗称であり、分類では枯草菌、学名では Bacillus subtilis nattoとなります。以下、納豆菌と呼びます。
ここでは、プロバイオティクスとして有効な胃酸に耐性のある納豆菌を使います。具体的には、7種類の納豆菌株を、pH3の培養液につけることで、酸に強い納豆菌株を選択します。ちなみに、胃酸のpHは1なので、条件としては弱めですが、この後の検証ではマウスの体質に影響を与えているので、スクリーニングは機能しているようです。
マウスには、納豆菌と生理食塩水を混ぜた液体を摂取させることで納豆菌の効果を見ていきます。また、マウスには低脂肪食と高脂肪食の二種類を食べさせて影響を検討しています。
結果、納豆菌、あるいはプロバイオティクスの乳酸菌を摂取したマウスについて、各臓器の重量が減少すること、体重が減少することが確認されました。
また、高脂肪食のマウスでは副睾丸脂肪、腎周囲脂肪、腹部総脂肪が低脂肪食のマウスと比較して有意に増加しました(P < 0.01)。しかし、納豆を摂取した後、脂肪量は有意な減少を示し、同様の結果が乳酸菌摂取群にも現れました。効果としては、納豆菌の方が乳酸菌よりも強かったとのことです。
(酸性スクリーニングの影響かもしれません)
内蔵脂肪の蓄積についても比較すると、内臓脂肪の重量が、納豆菌あるいは乳酸菌の摂取により減少していたそうです。
著者らは、肝臓における脂質代謝にも注目しています。ここでは、脂質代謝に重要な2つの遺伝子、PparαとSrebp-1cが納豆菌の摂取によって制御されることを明らかにしました。
また、腸内細菌叢にも注目すると、低脂肪食マウスと比較して高脂肪食のマウスでは細菌の存在量が有意に減少していました。納豆菌または乳酸菌の介入後、腸内細菌叢の存在量はある程度増加しましたが、正常なマウスのレベルまで戻ることはありませんでした。
本研究の限界点としては、納豆と詳細な代謝、特に炎症との関係を示せてはいないことにあります。また、食生活に納豆を組み込んだボランティアによる長期間の実証が必要であるとしています。
結論としては、納豆菌の摂取によって食事による肥満に対して予防・治療効果を持つことを初めて明らかにできた、としています。
今後も、納豆に関する研究例は増えていくと思います。食から腸を整えていく、その先陣を切ってもらいたいですね!
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それでは、本日も一日、お疲れさまでした。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S175646462030147X
Pinggui Wang, Xiang Gao, Yan Li, Shanglong Wang, Jia Yu, Yuxi Wei,
Bacillus natto regulates gut microbiota and adipose tissue accumulation in a high-fat diet mouse model of obesity,Journal of Functional Foods,Volume 68,2020,103923,ISSN 1756-4646,https://doi.org/10.1016/j.jff.2020.103923.