#118 腸内環境と密接に関係する生活週間。来週のテーマは、腸内細菌×〇〇!

更新日: 2022/12/25

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毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードでは、今週一週間扱ってきたテーマである生活週間と腸内環境、腸内細菌の関係についてまとめると共に、来週お話するテーマの告知をしていきます!生活習慣として、今週は運動、睡眠、喫煙、飲酒について取り上げて来ました。早速、おさらいをしていきましょう!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx

生活習慣と腸内環境

今週は、生活習慣と腸内環境についてお話してきました。生活習慣とは、日々繰り返し行う行動ですが、様々な活動の中から運動、睡眠、喫煙、飲酒の4つについて着目してお話をしていきます。

運動

まずは、運動と腸内環境の関係について。運動とひとくくりにしても、内容は様々なので、筋トレ、持久系トレーニング、ヨガにフォーカスしてお話をしていきました。まずは筋トレと腸内環境に関する研究事例についてです。

論文タイトルは"Impact of Different Exercise Modalities on the Human Gut Microbiome"です。本研究では、筋トレなどの運動が与える腸内細菌叢への影響を評価するために、レジスタンストレーニングと心肺運動負荷試験を行っています。レジスタンストレーニングとは、筋肉に一定の負荷をかけるトレーニングで、筋トレの一種です。一方の心肺運動負荷試験は、自転車を漕ぐ運動を通して血圧などの計測を行う試験です。

運動と腸内細菌叢の関係を調査するために、レジスタンストレーニングと心肺運動負荷試験、糞便中の腸内細菌叢解析を行った結果、運動の介入による腸内細菌叢の変化は、心肺運動負荷試験の初期にのみ観測されたものの、両方の試験で持続的な変化は確認されませんでした。

一方、運動によって得られる効果については、特定の細菌の存在量と関係することが示唆されました。運動による腸内細菌叢への明確な影響は観測されなかった一方、腸内細菌叢が与える運動への影響が示唆されたというのは面白いですね。

続いてが、持久系トレーニングと腸内環境について。論文タイトルは、Frontiers in Nutritionの"Interplay Between Exercise and Gut Microbiome in the Context of Human Health and Performance"で、レビュー論文となります。

この研究では、心肺フィットネスと呼ばれる単語が登場します。心肺フィットネスとは、呼吸系と循環系による酸素の供給能力をさし、これらを使う運動=持久系トレーニングについての考察をしていきます。

近年の研究から、腸内細菌叢と運動の関係を明らかにする報告が集まってきました。この研究では、持久系トレーニングに関連する研究の知見をまとめたところ、適度な運動により腸管透過性を低下させ免疫機能として健全な状態に体を保ち、短鎖脂肪酸の産生菌が増加するということです。また、アスリートに固有の細菌叢が知られており、アスリートにとって重要な栄養の合成にも関与しているとのことでした。

最後に紹介した運動はヨガです。研究は、"Yoga in Patients With Inflammatory Bowel Disease: A Narrative Review"というレビュー論文にまとめられており、ヨガを行うことで炎症性腸疾患の症状が改善されることが示されています。この研究では、炎症性腸疾患とヨガに関係する論文を集めてきて、知見をまとめたところ、炎症が落ち着いている寛解期の炎症性腸疾患患者がヨガを行うことは、補助的な治療として有効であるということが分かりました。

まとめます。筋トレが与える腸内環境への影響はまだ明確に明らかになってはいないものの、腸内細菌叢と運動パフォーマンスの間には関連性がありそうだということです。持久系トレーニングについては、適度な運動により腸管透過性を低下させたり免疫機能を健全な状態に保つことが示唆されています。ヨガについては寛解期の炎症性腸疾患患者に有用な補助的治療であることが示唆されています。

睡眠

続いて睡眠についてです。
睡眠研究については、PLOS ONEより"Gut microbiome diversity is associated with sleep physiology in humans"を元に、お話をしました。

色々な人の腸内細菌叢や睡眠について調査をした結果、睡眠の質が高く量が多い人については、腸内細菌叢の多様性が高いこと、抽象的思考能力が高いこと、炎症性サイトカインのIL-6濃度が高いことが示されました。この研究では睡眠や免疫についてのスコアリングを行い、相関解析の観点から腸内細菌叢と睡眠に関係があるということを主張した点重要であると言えます。

まとめとしては、睡眠の質が高く量が多いと腸内細菌叢の多様性が高くなる傾向にありそうだということです。

喫煙

続いて、喫煙についてです。喫煙については、以前からアルコールの摂取によらない脂肪肝である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD: ナッフルド)、そしてNAFLDが進行した非アルコール性脂肪性肝炎のリスクファクターとして知られてきました。しかし、何故リスクファクターになるのかについては明確ではありませんでした。

"Gut bacteria alleviate smoking-related NASH by degrading gut nicotine"という論文では、NALDFと喫煙の間に、腸内細菌が介在していることを明らかにしています。具体的には、喫煙によるニコチンの摂取によって、ニコチンが腸内に蓄積し、特定の酵素の活性化に伴って非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLDから非アルコール性脂肪性肝炎NASHへの進行に寄与することが示されました。また、腸内細菌であるB. xylanisolvensがニコチンの分解を介在することにより、NAFLDからNASHへの進行を緩和することが示唆されました。

腸内細菌叢は人それぞれ。つまり、喫煙による肝疾患リスクも、腸内細菌叢の違いに伴い変化するということです。個別化医療に腸内細菌叢は重要ですね。

飲酒

最後にご紹介したのは、飲酒について。飲酒によって体内に取り込まれるエタノールは、ヒトにも細菌にも有害です。腸内環境と飲酒の関係について論じたレビュー論文、ALCOHOL RESEARCH誌の"The Gastrointestinal Microbiome"では、飲酒は腸内細菌叢を変化させ、腸管透過性を高める要因となりえるとしています。また、腸内細菌叢の変化と腸管透過性の亢進に伴って、アルコール性肝疾患を始めとする病変や、血中へのエンドトキシンの流入による炎症が起こることが考えられています。

次週の予告

ここからは、来週にお話するテーマの発表です。

来週は、腸内細菌×企業ということで、プロバイオティクスを作る会社についてまとめていきます。というのも、腸内環境や腸内細菌叢に対する理解が深まるにつれて、腸内細菌叢をコントロールしたいという目標が見えてきました。これにより、健康状態を維持したり、疾患や薬剤の応答性を改善するなどの効果が期待できるためです。

とは言っても、プロバイオティクスを作る企業は色々あるので、その一部を紹介できればと思います。紹介して欲しい企業があれば教えて下さい!

来週は、4社ほど紹介をしてから総括し、12/31には今年の締めくくり回、1/1には新年挨拶を予定しております!今年も最後までお付き合いくださいませー。

おわりに

今週のエピソードテーマはいかがでしたか?是非感想を聞かせて下さい!
個人的には、喫煙と腸内細菌叢の関係がとっても興味深いと感じました。生活習慣は人それぞれだからこそ、そこに宿る腸内細菌叢も人それぞれです。

したがって、体質や薬剤の奏効率も変化することが容易に考えられます。だからこそ、ヒトマイクロバイオームの調査と個別化医療の親和性は非常に高いというのが、室長個人の見解です。

以上、生活習慣と腸内細菌叢のお話についてまとめてみました!

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本日も一日、お疲れさまでした。

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