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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今週は、一週間に渡って腸内環境におけるリーキーガットについてお届けしていきます!リーキーガットとは、日本語では腸管壁滲漏と呼ばれる現象で、腸管上皮細胞の密着が損なわれることによって、腸管の物質透過性が増加することで、血流に本来入らない異物などが侵入する状態を指します。リーキーガットの結果、健康上の問題を引き起こすことが知られており、リーキーガットに対する正しい理解が重要です。そこで、今回はリーキーガットの主役となる構造である、密着結合(タイトジャンクション)について易しく解説していきます!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx
今回の本題へ入る前に、腸の構造を復習するところから始めます。腸は、大きく分けると小腸と大腸からなります。小腸や大腸は共通して、層状の構造になっていて、外側から粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、筋層、漿膜と異なる機能をもった細胞の層が重なっています。復習したい方は、#75をご参考にしてください!
これらの細胞の営みには、当然酸素や栄養が必要であるため、層構造の中には毛細血管が通っています。ここで、リーキーガットへの理解に重要となるのは、腸管の一番外側(→食べ物や腸内細菌が通る側)の粘膜上皮細胞が重要になります。
ここで、少し突拍子もない質問をします。個体は、どのように形成されているのでしょうか?どうして、細胞同士がバラバラに離れたり、自由に移動したり、構造を崩すこと無く存在できるのでしょうか?別の言い方をすると、どのようにして細胞同士が結合しているのでしょうか?
大きな視点でみると結合組織、小さな視点で見ると細胞間接着が重要です。今回は、リーキーガットに重要な上皮細胞における細胞間接着についてお話します。
実は、上皮細胞と上皮細胞の間には様々な細胞間接着の構造が備わっています。それが、先ほどお話しした密着結合を始め、接着結合、デスモゾーム結合やギャップ結合となります1)。特に、密着結合や接着結合は、腸内環境を考える上で非常に重要です。
接着結合は、カドヘリンと呼ばれる膜タンパク質が結合することで、細胞間をつなぎとめていますが、ここにF. nucleatumは自身の膜タンパク質を介して接着することが報告されています2) (エピソード#130にてお話しています)。
密着結合は、リーキーガットにおける主役の細胞間の密着構造になります。密着結合は、細胞間をミシンで縫い合わせるように配置されており、腸の管腔から組織の中に溶質が自由に漏れ出し、拡散するのを防いでいます。つまり、ヒトという個体を外界と隔てる上で、密着結合は重要な役割を果たしているのです。
密着結合では、クローディンやJAMと呼ばれるタンパク質が重要な役割を果たします3)。クローディンやJAMは細胞の側面に存在し、細胞膜を貫通する形で存在します。クローディンやJAMは、細胞間をつなぎとめる以外にも、一部のイオンや高分子を組織側へ透過させる傍細胞経路での物質輸送機能、細胞の方向性を決定する上で必須なフェンス機能があることが示唆されています3)。このように様々な機能を持ち奥が深い密着結合ですが、今回注目するのはクローディンやJAMの細胞間をつなぎとめる機能です。
では、タイトジャンクションのその先には何があるのでしょうか?
次回は、正常時に腸管から栄養吸収がされて血流に移行するまでのお話をします!
以上、腸管バリアとしての密着結合についてのお話でした!
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本日も一日、お疲れさまでした。
1) 和田 勝、細胞膜、更新日:2002/06/07、Access: 2023/01/28, URL:
https://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textbook/cellmemb.htm
2) Rubinstein MR, Wang X, Liu W, Hao Y, Cai G, Han YW., Fusobacterium nucleatum promotes colorectal carcinogenesis by modulating E-cadherin/β-catenin signaling via its FadA adhesin. Cell Host Microbe., 14(2), 195-206 (2013).
3) 大谷 哲久,古瀬 幹夫, タイトジャンクションの構造・機能連関の新しい視点, Journal of Japanese Biochemical Society 92(5): 731-734 (2020)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2020.920731.
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2020.920731/data/index.html