#145 不規則な食生活により誘発される腸内細菌の乱れと高いコレステロール値。
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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、本来は寝る時間に食事を摂ることで生じる不調について、概日リズムの乱れと腸内細菌の関係からお届けします。今回紹介するのは、2021年Heらの"Circadian Rhythm Disruption Influenced Hepatic Lipid Metabolism, Gut Microbiota and Promoted Cholesterol Gallstone Formation in Mice"という研究に基づいていますが、関心の対象は肝臓の代謝です。腸管にて吸収された栄養は静脈を通して門脈に集結し、肝臓にあつまります。さらに、一部の物質は肝臓での代謝を受けた後に腸管へ戻されます。このように、腸と肝臓は腸肝循環という物質循環を介して、密接につながっているのです。ですから、肝臓代謝と腸内細菌の関係は、様々な角度から研究されてきました。概日リズムの乱れが、肝臓の代謝や腸内細菌にどのような不調を与えるのでしょうか？早速内容に写っていきます！
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております！ぜひ遊びに来てください！
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肝臓での脂肪代謝を調べるためのマウスを使った試験
今回の試験では、成熟した雄のC57BL/6Jマウスを使用します。食事と、食事を与える時間帯が、今回の研究の肝になります。食事は、リソジェニック食と呼ばれるものをマウスに与えます。リソジェニックとは、結石を生成する性質を表した形容詞で、体液に含まれる成分が結晶化することで結石と呼ばれる固体が胆管などに生じます。ですから、今回のリソジェニック食は、肝臓において結石を生成しやすい食事ということになります。
続いては食事を与える時間帯についてです。一方のマウスについては、自由にリソジェニック食を与えます。もう一方のマウスについては、睡眠期(ZT0-12)、つまり本来の生活リズムに従うと寝ている時間にのみリソジェニック食を与えます。後者の食事については、リソジェニック食を、夜食として食べているという認識ですね。このように、本研究では自由な食事を摂取するコントロールマウスと、時間制限食事マウスを用いた実験を行います。
これらのマウスについて、4週間飼育し、食事消費量、体重増加、胆石の発生率、循環代謝、肝臓への脂質蓄積、肝臓における時計遺伝子の発現量、腸内細菌叢を解析していきます。
時間制限食事マウスについては概日リズムが乱れて腸内細菌叢の概日リズムが変化しコレステロールのレベルが上昇
4週間の飼育の結果、本来は眠る時間に食事を与えられたマウスについて、時計関連遺伝子の発現パターンが変化し、概日リズムが乱れていることが確認されました。これは、人間に例えると毎日夜食を食べていると生活リズムが乱れるといった感覚です。
また、時計関連遺伝子の中でも胆汁酸やコレステロールの代謝に関連する遺伝子の概日リズムや、腸内細菌叢の概日リズムが乱れていることが確認されました。これに伴って、胆汁にコレステロールが多く含有されること、胆石の形成が促進されることが明らかとなりました。
胆汁酸は、腸管における脂質の吸収などに関与することから、腸と肝臓における脂質の代謝に影響が出ていることが考えられます。
今回の研究では何を言いたかったのか
では、今回の研究では何を言いたかったのでしょうか。
簡潔にまとめると、マウスに対して結石を生成しやすい食事を夜食として4週間与え続けた結果、時計遺伝子の発現パターンが変化し、概日リズムが乱され、胆汁中のコレステロール値が高く、肝臓の胆汁酸およびコレステロール代謝の異常と関連することが報告されました。
この結果は、概日リズムと食事、概日リズムと腸内細菌叢、概日リズムと脂質代謝に密接な関係があることを示しています。
以上、不規則な食生活により誘発される腸内細菌の乱れと高いコレステロール値についてのお話でした！
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参考文献
He, Chuanqi et al. “Circadian Rhythm Disruption Influenced Hepatic Lipid Metabolism, Gut Microbiota and Promoted Cholesterol Gallstone Formation in Mice.” Frontiers in endocrinology vol. 12 723918. 21 Oct. 2021, doi:10.3389/fendo.2021.723918