#71 腸内環境理解のための生物学入門。Part2: DNAはRNAへ。

更新日: 2022/11/01

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現役の腸内細菌研究者がお届けする腸内細菌相談室。
室長の鈴木大輔がお届けします。

腸内環境理解のために、生物学の基礎をおさらいする本シリーズ。前回までに、わたしたちとDNAの関わりや、遺伝情報の正体についてお話してきました。今回は、前回の知識を活用してDNAとRNAの関係性についてお話していきます。

RNAはリボ核酸であり、DNAと比較してデオキシ化されていない点、不安定性に富むというお話をしてきましたが、では何故RNAが存在するのでしょうか?DNAが遺伝情報を記録していれば、あとは読み取ればタンパク質などの生き物に必要な物質は生産できるのではないでしょうか?今回は、このような疑問点についても答えていければと思います!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx

RNAとは何か?

まずは、前回の復習を兼ねてRNAとは何かからお話していきます。RNAは日本語で、リボ核酸です。DNAと同様にヌクレオチドをモノマーとした高分子です。ヌクレオチドは、リン酸、糖、塩基の分子が結合して生じた分子です。なので、RNAは物質の名前であることを、まずはしっかり認識します。

RNAは、DNAと異なる構造が2点存在します。1点目は糖がデオキシリボースの代わりにリボースであること、2点目は塩基がチミンの代わりにウラシルであること。1点目はRNAの安定性を損なう点、2点目は塩基配列を構成する塩基が異なる点で重要です。

でも、ここまでのお話では、RNAとDNAの比較をしたに過ぎません。RNAとDNAの関わりはどのようなものでしょうか。

DNAとRNAの関わり:転写

DNAは遺伝情報の保存を行うのに対して、RNAは遺伝情報の伝達を行います。具体的には、DNAに記録されている遺伝情報が、RNAに写し取られることで、核の外へと遺伝情報が移動していきます。

もう少し丁寧に説明します。DNAは核と呼ばれる膜構造の中に存在しています。核は、細胞質基質にプカプカと浮かんでいる点、細胞の中にはありながらも、特殊な環境の中にあると言っても良いかもしれません。そこで、遺伝情報を核の外に運んであげる必要があります。ここで登場するのが、RNAです。DNAがRNAに写し取られる過程のことを転写と呼びます。転写により得られたRNAは特別に、メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれています。理由としては、DNAに存在する遺伝情報を伝達するためです。

転写の過程はシンプルです。まず、二重らせん構造を取っていたDNAの一部が酵素によってほどかれます。この構造をバブルと呼びます。バブルにおいて、DNAの塩基はむき出しになっているので、読み取りを行うことができます。ここでは、RNAポリメラーゼと呼ばれる酵素がDNAの配列を読み取ってRNAにします。

では、遺伝情報が読み取られたmRNAはどこに向かっていくのか?この点については、次回に詳しくお話します。

RNAは情報と機能を担う

ここでは視点を変えて、RNAの種類について取り上げます。RNAの種類といっても、塩基配列が異なるRNAのような塩基に基づく違いではなく、RNAの機能に関する種類です。

本日登場したmRNAの他にも、次のようなRNAが存在します。

・リボソームRNA:RNAからタンパク質に遺伝情報が読み替えられる過程で必要なタンパク質の部品。次回に詳しく解説。
・転移RNA:タンパク質合成の際に、アミノ酸をリボソームに運ぶRNA。
・核内低分子RNA:比較的小さなRNAで、mRNA前駆体の加工を行う。
・マイクロRNA:転写後の遺伝子発現調節を行う。
・リボザイム:RNA自体が酵素として機能する。

ここまで来ると、RNA多すぎないか?!って成りますね。そうなんです。RNAの機能ってめちゃめちゃ沢山あるんです。DNAが遺伝情報の記録を担うのに対して、RNAは遺伝情報の一時的な記録から運搬、読み替えまでの機能も担っているのです。あまり注目されないRNAですが、超重要な分子です。

では、一番最初のお話に立ち返りましょう。
RNAが存在するのは何故でしょうか?遺伝情報の保存はDNA、機能はタンパク質が担えばそれで十分なのでは?

RNAワールド仮説

ここで登場するのが、RNAワールド仮説です。実は、今までお話してきたことには、”卵が先かニワトリが先か”的な問題をはらんでいます。

つまり、DNAはRNAに写し取られて読み替えられ、タンパク質になります。ですから、遺伝情報の流れとしてDNA→RNA→タンパク質です。でも、冷静に考えてみるとDNAやRNAを合成するには酵素、すなわちタンパク質が必要ですよね。でも、タンパク質ってDNAが元になっているのではないか?

このようにDNA、RNA、タンパク質の遺伝情報の流れは循環論法に陥ってしまうのです。ここで、遺伝情報と機能の両方を担うRNAがもととなり、DNAやタンパク質が生まれてきたという考え方が生まれました。昔々は、RNAしか登場しない世界があったというのが、RNAワールド仮説です。

RNAの塩基配列が遺伝情報の記録を行えること、リボザイムとして酵素のような機能を持てることを考えると、信ぴょう性がありますね。現在も、この点は議論されています。

おわりに

本日は、RNAに焦点を当ててお話してきました。いかがでしたでしょうか?
DNAとRNAの関係性や、RNAの存在意義について、少しでも知って頂けたら幸いです。

次回は、RNAがタンパク質に翻訳される話、セントラルドグマの破綻についてお話していきます!

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それでは、本日も一日、お疲れさまでした。

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