#158 リーキーガットと細菌の宿主内移動。

更新日: 2023/02/03

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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードでは、腸管バリアが破綻しリーキーガットになった場合に起こることをお話していきます。#156では、遺伝的要因や環境要因の影響を受けて腸管透過性が変化し、リーキーガットになることをお話してきました。リーキーガットになると、腸管内腔に存在する腸内細菌が血流に乗って体中を移動します。この現象を、Microbial Translocationと呼びます。Microbial Translocationの結果、数々の不調につながることが、現在は考えられる様になってきました。今回のエピソードでは、2020年Chakarounらの"Gut Microbiome, Intestinal Permeability, and Tissue Bacteria in Metabolic Disease: Perpetrators or Bystanders?"を元に、リーキーガットの発生から結果まで お話していきます!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx

リーキーガットは何故起こる?

まずは、リーキーガットが発生する原因から復習していきます。リーキーガットは、上皮細胞間の密着結合が損なわれることによって、腸管透過性が増加した状態です。密着結合は英語でタイトジャンクションと呼ばれており、複数のタンパク質が細胞間をつなぎとめています。重要と成るのはオクルディンやクローディン、JAMなどのタンパク質ですが、これらに何らかの損傷が加わるとリーキーガットとなります。

密着結合の損傷の原因としては、遺伝的要因と環境要因が知られています。遺伝的要因としては、密着結合に関係するタンパク質に変異が入ることで、そもそもタンパク質の正常な機能が発現されない結果となります。環境要因としては、食事やストレスなど、すでに存在するタンパク質に対して何らかの外的要因が作用することで、タンパク質の正常な機能が発現されない結果となります。

リーキーガットと食事と腸内細菌と

近年、腸管の透過性に影響を与える様々な栄養が明らかとなってきました。例えば、アミノ酸、ビタミンDやレチノールなどのビタミン、ポリフェノールや亜鉛などは腸管透過性を低下させる一方で、一部のタンパク質、アルコールや中鎖脂肪酸は腸管透過性を増加させることが考えられています。つまり、栄養によって腸管透過性、リーキーガットに対する良し悪しがあるのです。

例えば、グルタミン酸やトリプトファンは、密着結合に関連するタンパク質の発現に作用することで、腸管の透過性を低下させることが示されています。この結果は、ヒトにおけるグルタミン酸の補給についての調査でも明らかとなっています。

また、食事はそこに含まれる食品添加物が、腸内環境における炎症や、腸管透過性の増加、侵入性病原性細菌に対する感受性の増加に繋がることが明らかとなっています。腸管透過性の増加の結果として、腸内細菌は体の中を移動することが報告されています。腸内細菌や腸内細菌の代謝産物が体中に循環する結果、自己免疫疾患の発症要因になることが考えられています1)。

今回のエピソードでは、食事などの環境要因によって誘発されるリーキーガットが、炎症、ひいては腸内細菌の全身移動に関連するというお話をしてきました。食生活は、こんなにも腸内環境や腸内細菌、そして健康に影響を与えているということを、伝えられていたら嬉しいです!

以上、リーキーガットと細菌の宿主内移動についてのお話でした!

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本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

本エピソードのメイン参考文献
Chakaroun RM, Massier L, Kovacs P. Gut Microbiome, Intestinal Permeability, and Tissue Bacteria in Metabolic Disease: Perpetrators or Bystanders? Nutrients. 2020 Apr 14;12(4):1082. doi: 10.3390/nu12041082. PMID: 32295104; PMCID: PMC7230435.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7230435/

2) Ma, Hong-Di et al. “Gut microbiota translocation promotes autoimmune cholangitis.” Journal of autoimmunity vol. 95 (2018): 47-57. doi:10.1016/j.jaut.2018.09.010

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