現役の腸内細菌研究者がお届けする腸内細菌相談室。
室長の鈴木大輔です。
腸内環境における免疫応答を深堀りする本シリーズも第5回目に突入しました。ここまでに、免疫細胞の分化の仕組みからナイーブT細胞へのシグナル伝達について扱ってきました。
今回で、免疫細胞に関連する基礎知識のお話は一段落です。テーマは、2種類の樹状細胞とそれらの成熟について。それでは、早速本編に移りましょう!
この内容は、Podcastでもお楽しみ頂けます。
今までの復習からお話します。樹状細胞は、ナイーブT細胞に抗原提示を行うことで分化誘導を行う機能があります。また、分化誘導には抗原提示のみでは不十分で、シグナル2の共刺激とシグナル3のサイトカインが重要でした。
ここで、ナイーブT細胞については膜タンパク質によって3種類存在することを以前お話しましたが、実は樹状細胞も2種類存在します。ナイーブT細胞の種類については、下記の記事にて説明しました。
https://note.com/chonai_saikin/n/n2612540eeea8
樹状細胞は、従来型樹状細胞と形質細胞様樹状細胞に分類することができます。それぞれの役目について、説明していきます。
従来型樹状細胞(Conventional Dendritic Cell)は、病原性細菌になどに由来する抗原を認識して提示し、異物抗原特異的な細胞傷害性T細胞の分化誘導に関連しています*。
また、サイトカインの分泌細胞としても重要です。樹状細胞表面にはトール様受容体(Toll-Like Receptor)と呼ばれる膜タンパク質が存在しており、TLR特異的な抗原認識を行うことで細胞内へのシグナル伝達を行っています。
TLRは番号による分類がされていて、TLR2は細菌の細胞壁成分など、TLR3はウイルスのDNA、TLR4はLPS、TLR5は細菌の鞭毛タンパク質、TLR7/TLR8はウイルスのRNA、TLR9は細菌のDNAの認識に関係しています。
TLRによる従来型樹状細胞の活性化によって、サイトカインの産生が起こり、免疫応答が促進されます。このようなTLRを介したシグナル伝達がないと、T細胞へのシグナル伝達につながらず、結果として免疫寛容の状態となります。
形質細胞様樹状細胞(Plasmacytoid Dendritic Cell)は、ウイルス感染時に重要な樹状細胞です。役割は、ウイルス感染時にI型インターフェロンを産生し、ウイルス抗原に特異的な免疫応答を行うことにあります*。
I型インターフェロンは、ウイルスに感染した細胞のタンパク質合成阻害や、RNAの分解などの司令を出すサイトカインです。
T細胞のみならず、樹状細胞についても様々な役割をもつ細胞が存在することを、理解して頂けたと思います。
ここまで、樹状細胞、T細胞についての深い理解を目指して、全5回の基礎知識説明講座を行ってきました。しかし、ここは腸内細菌相談室。次回にて、ようやく腸関連疾患と樹状細胞に関するお話に移ります。
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それでは、本日も一日、お疲れさまでした。
*従来型樹状細胞と形質細胞様樹状細胞の参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/36/3/36_135/_article/-char/ja
小井戸 薫雄, 伊藤 善翔, 闞 鑫, 尾藤 通世, 堀内 三吉, 内山 幹, 大草 敏史, 腸内細菌と樹状細胞, 腸内細菌学雑誌, 2022, 36 巻, 3 号, p. 135-141.