毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、腸内細菌を創薬の観点で注目しているNoster(ノステル)株式会社についてお話します。ノステル株式会社は、日東薬品工業ホールディングス株式会社のグループ会社として、2020年5月15日に設立された、比較的新しい会社です。ノステルは、創薬として腸内細菌が産生するポストバイオティクス®に着目する他に、腸内細菌叢解析サービス、若手研究者の支援事業も行っています。
※執筆の途中で気づいたのですが、ノステルの提供する腸内細菌解析サービスは、基本的には研究目的用途でしたので、一般の方の受注は難しそうです。ですから、「腸内細菌についてこんな事業もあるんだ」という視点で楽しんで頂けると嬉しいです。
腸内細菌事業の新しい風となるノステルについて、覗いてみましょう!
注意として、室長はNosterが公開している情報を元にお話をすることを、予めご了承ください。サービス利用の感想などは含まれておりません。詳しい情報は、Nosterホームページに掲載されています。
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx
まずは、ノステルが注目するポストバイオティクス®のお話です。プレバイオティクスは腸内細菌の餌、プロバイオティクスとは腸内細菌の菌体を指し、これらを摂取することが腸内環境の改善につながると期待されています。
一方、ポストバイオティクス®は未だ馴染みの無い言葉です。ポストバイオティクス®とは、腸内細菌が産生する有益な代謝物のことを指します。腸内細菌が腸内環境へ影響を与える経路は色々考えられますが、その1つに腸内細菌が産生する物質を介した経路もあります。
ノステルの主力商品として、ポストバイオティクス®の1つであるHYA®(10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid)があります。この化合物は、植物に由来するリノール酸が腸内細菌の代謝を受けることで産生され、糖尿病の要因となるインスリン抵抗性を改善する効果があることが確認されています。このように、ポストバイオティクス®へ着目することで、疾患の治療に対する新たな光を当て、研究開発するのがノステルです。
ノステルが提供するサービスとしては、①腸内細菌叢解析サービス、②メタボローム解析サービスが存在します。
腸内細菌叢解析サービスは、ヒト、動物の糞便について、DNA抽出から解析までの一連の作業を行ってくれます。多様性解析、統計解析などの二次解析はオプションになるということです。シーケンシングでは16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンシングによって、腸内細菌の群集構造を解析します。また、リアルタイムPCRによる菌の定量も行っているようです。
費用は、発注数量により変動するのですが、1-7検体の場合、1検体当たり31350円ということでした。納品されるのがFastqファイルというシーケンシングの生データであることを考えると、自由度の高い利用ができることは魅力的です。
また、メタボローム解析サービスも行っています。メタボローム解析では、糞便、血液、食品、培養液に含まれる飽和・不飽和脂肪酸の相対定量値、代謝パスウェイマップの調査を行ってくれます。1検体あたり20万円でした。
同社のサービスは、サイキンソーの手掛ける一般向け、メタジェンの手掛ける企業の健康診断や共同研究開発と比較すると、ガッツリ研究開発向けのサービスでした。ポストバイオティクスに注目した創薬が、疾患の有効な治療法につながる未来が楽しみです。
以上、微生物創薬の新興企業、ノステル株式会社のお話でした。
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