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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、海藻が優秀なプレバイオティクスになるというお話をします。海藻というと、海苔や昆布など日本人にとっては身近な食材です。海藻は身近なだけでなく、多糖類やポリフェノールが豊富に含まれることから、プレバイオティクス、つまり腸内細菌の餌としても有効であることを示したのが今回紹介する研究です。論文は、nutrients誌の"The Prebiotic Effect of Australian Seaweeds on Commensal Bacteria and Short Chain Fatty Acid Production in a Simulated Gut Model"に掲載されています。
では、海藻がスーパーフードであるというお話を始めます!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
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今回、プレバイオティクスとしての調査対象になった海草は、オーストラリア産の3種類の海草です。名前は、Phyllospora comosa、Ecklonia radiata、Ulva ohnoiで、それぞれ昆布やアオサの仲間です。これらについて、海草の全成分、多糖類抽出物、ポリフェノール抽出物の影響を調査していきます。
実験は、ヒトの腸内細菌を培養する、in vitroの系で行います。in vitroとは試験管内という意味で、in vivo=生体内とは対比して使われる言葉です。マウスやヒトの体内=in vivo系ではないので、腸内環境の厳密な再現にはなりませんが、分析を詳しく行えたり様々な実験が行えるのはin vitro系の利点です。
今回の糞便は、過去3ヶ月に抗生物質の投与を受けていない健康なボランティア3名によって提供されました。海草のプレバイオティクスとしての能力を評価するために、多糖類の対照区としてイヌリン、ポリフェノールの対照区としてエピガロカテキン酸のプレバイオティクスとしての能力も評価しています。
実験のイメージとしては、試験管内に腸内細菌や培地、今回の海草や対照となるイヌリン、エピガロカテキン酸を入れて、腸内細菌の働きを調査するというものです。
では、実験の結果はどうだったのでしょうか?
結果は、海草の全抽出物、多糖類抽出物、ポリフェノール抽出物の添加によって、乳酸菌であるLatobacillales、酪酸菌であるFaecalibacteria、Roseburia、BlautiaおよびButyricicoccusが増加することが明らかとなりました。
また、腸内環境と同様に発酵過程を24時間進行させると、海草の抽出物におけるFirmicutesの相対存在量は57.35-81.55%と、イヌリンやエピガロカテキン酸と比較して大きい結果となりました。一方、Actinobacteriaは海草の抽出物添加によってむしろ減少することも確認されました。
また、腸内細菌の代謝産物についても比較すると、短鎖脂肪酸の産生量は、E. radiataとU. ohnoi、つまり昆布とアオサの仲間について、イヌリンやエピガロカテキン酸よりも多い結果となりました。例えば、昆布の多糖類抽出物やアオサの全抽出物について、イヌリンの約3倍、エピガロカテキン酸の約30倍の短鎖脂肪酸産生量を示しました。
では最後に、この論文では何を言いたかったのかのコーナーです!
この論文では、海草のもつプレバイオティクス=腸内細菌の餌として機能に注目して、腸内細菌の培養というin vitroの系を通して機能を評価しました。すると、イヌリンなどのプレバイオティクスと比較して、Firmicutesを増やしてActinobacteriaを減らし、短鎖脂肪酸の産生量が非常に高くなることが分かりました。ここから、海草とその抽出物が、腸の健康や免疫機能維持に重要であるという可能性が示唆されました。
以上、海藻が優秀なプレバイオティクスになるというお話でした!
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Shannon, E.; Conlon, M.; Hayes, M. The Prebiotic Effect of Australian Seaweeds on Commensal Bacteria and Short Chain Fatty Acid Production in a Simulated Gut Model. Nutrients 2022, 14, 2163. https://doi.org/10.3390/nu14102163