#136 あなたのお腹にもいるかも?コリバクチン産生細菌。

更新日: 2023/01/12

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毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードでは、コリバクチンを産生する腸内細菌を、どれくらい皆さんが保有しているかについてお話していきます!コリバクチンは、2006年に発見された遺伝子損傷性毒素で、大腸がんの発症との関係が示唆されています。コリバクチンの毒性は、構造中にあるシクロプロパンがDNAとの共有結合を形成し、DNAの構造を損なうことで遺伝毒性を発現します。そんなコリバクチンを産生する細菌は、どれくらい一般的に腸内環境から発見されるのでしょうか?

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx

どれくらいの割合の人がコリバクチンの産生をする大腸菌を持っている?

まずは、前回のエピソードの復習をすると、コリバクチンは非リボソームペプチドの一種であり、リボソームによるペプチド合成経路に依存せずに作られます。具体的には、ポリケチド合成酵素と呼ばれる酵素によって、コリバクチンが作られることから、ポリケチド合成酵素を含んだ遺伝子のまとまりであるpksアイランドが重要になります。腸内細菌がpksアイランドを持っているかどうかが、腸内細菌がコリバクチンを産生するかどうかを判断する基準となります。

まずは、2012年にARTHURらが行った、腸内細菌叢とがんについての研究例から紹介していきます※1。本研究では、はじめに大腸がんモデルマウスにおいて、pksアイランドをもつ大腸菌を投与した結果、がんの進行が促進することが確認されました。また、この大腸菌からpksアイランドを除いた上で投与すると、腸の炎症や腫瘍の多発性、浸潤性は減少傾向にあることがわかりました。

続いて、pksアイランド陽性の大腸菌が、大腸がん患者21名、炎症性腸疾患患者35名、健常者24名の大腸組織から検出されるか調査しました。すると、大腸がん患者の66.7%、炎症性腸疾患患者の40%、健常者の20.8%にpksアイランド陽性の大腸菌が検出されています。

この結果は結構衝撃的です。大腸がん患者の2人に1人以上、健常者でも5人に1人以上はコリバクチンを産生する大腸菌を腸内に保有しているのです。

この結果は、Martinらの2004年に行われたイギリスの研究のコホートに基づいています。ですから、食生活を始めとした環境要因が異なる日本についても、同じ結論を適応することは難しいです。しかし、少なくとも大腸がんの発症に関与するとされるコリバクチン産生大腸菌は、珍しくはない、ということはできそうです。

ここまでに、大腸菌に着目してお話をしてきましたが、近年大腸菌以外にもコリバクチンを産生できる腸内細菌が見つかってきています。次回は、視野を広げて腸内細菌叢におけるコリバクチン産生菌についておはなししていきます!

以上、あなたのお腹にもいるかもしれない、コリバクチン産生細菌についてのお話でした!

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本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

1* Arthur JC, Perez-Chanona E, Mühlbauer M, Tomkovich S, Uronis JM, Fan TJ, Campbell BJ, Abujamel T, Dogan B, Rogers AB, Rhodes JM, Stintzi A, Simpson KW, Hansen JJ, Keku TO, Fodor AA, Jobin C. Intestinal inflammation targets cancer-inducing activity of the microbiota. Science. 2012 Oct 5;338(6103):120-3. doi: 10.1126/science.1224820. Epub 2012 Aug 16. PMID: 22903521; PMCID: PMC3645302.


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