#56 PMSリスクと腸内細菌叢。世界初の試みを日本企業から。

更新日: 2022/10/17

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現役の腸内細菌研究者がお届けする、腸内細菌相談室。
室長の鈴木大輔がお届けします。

今回から、腸内細菌相談室ニュースのカテゴリーを新たに加えてお話していきます。腸内環境や腸内細菌に関する研究、サービスや製品開発は日進月歩で進んでおり、鮮度が重要な情報も沢山あります。ホットな内にトピックを皆様へお届けすることが、このカテゴリーの狙いです。

ちなみに、いつもの論文紹介や研究紹介では、実験的な観察事実や介入結果など、知識として面白く長期的に有用な情報を発信しています。

今回は、2022年10月14日にプレスリリースされたニュースについて。
PMSリスクを腸内細菌叢の観点から解析し、結果を受け取ることができる、パラディインターナショナル株式会社のサービスについて紹介します。

※個人的な興味の元に本記事を作成しています。

この内容は、ポッドキャストからもお楽しみ頂けます!遊びに来てね〜

腸内細菌叢とフェムテック

腸内細菌相談室では、普段腸活や免疫に関するお話をしています。今後、お話をしていこうと思う分野に、フェムテックがあります。

株式会社 日立コンサルティング作成、経済産業省宛資料によるフェムテックの定義を以下に示します。

フェムテック(Femtech)はFemale(女性)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語で、女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスである。

令和2年度産業経済研究委託事業
働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に
与える効果と課題に関する調査 報告書 (概要版), p2, Access: 2022/10/14
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/R2fy_femtech.pdf

生物学的に、男性と女性の構造や機能は大きく異なります。大きく異なることにこそ意味があると言っても良いかもしれません。したがって、男性と女性は身体的に固有の問題を抱える運命にあると言えます。

近年、女性に関する健康課題と腸内細菌叢の間には様々な関係があることが、研究によって明らかとなってきました。そして、このような研究により得られた知見を元に、女性課題を解決しようとする、フェムテック分野が熱いのです。

サービス内容

詳細はこちらをご覧ください。

https://www.paracheckbio.com/

もともと、PARA Check BIOというサービスがあります。このサービスでは、便サンプルを提供することで腸内細菌叢の群集構造や機能解析のレポートを受け取ることができます。レポートには、個人の解析結果に基づいて、食品のレコメンドが得られるので、結果に応じたアクションを起こしやすいのが特徴です。

このサービスに、PMSリスクに関する判定が追加したというのが新しいです。PMS(PreMenstrual Symptoms: 月経前症候群)は、月経前の身体的、精神的な変調で、頭痛や不眠からイライラまで多岐にわたります。個人差が大きいことから、腸内細菌叢とPMSの関連が研究されています。

例えば、2022年にPLoS One掲載のTakeda et al.の報告があります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9140228/

プレスリリースでは、次のような記述があります。

(前略)
PARA Check BIO(パラチェック ビオ)に、PMSのリスク分析を追加し、PMSのリスク値やリスクの高い方向けに食事(食品)ガイドをご提供いたします。
簡便な便の検査で病気のリスクを知るとともに、明確な食事ガイドで腸内細菌叢をコントロールするセルフメディケーションにつながるサービスで女性のQOL向上に貢献します。

zakzak by 夕刊フジ, 世界初!PMSリスクを腸内細菌叢から自宅で見える化 10月20日一般発売
2022.10/14 15:00 プレスリリース
Access: 2022/10/14, https://www.zakzak.co.jp/pressrelease/atpress/DZGKF75BSNO3HNSGNIT6SZCPLU/

参考価格は税込で53900円。詳細で行動に繋がるレポートが手に入る点は魅力的ですが、とても安いとは言えません。しかし、研究コストや解析コストなどを考えると妥当な値段とも言えます。気になる方は、まず問い合わせをしてみるのが手かもしれません。

詳細な解析にはコストがかかる点、市場価格が高く気軽に検査しづらいのは、業界全体での課題でしょう。今後、より多くの方が利用できるサービスになれば嬉しいなと思います。

おわりに

お断りとして、私自身はこのサービスを利用したことがないので、あくまでも話題提供のスタンスです

今後、もっと一般に腸内細菌を調べる世界が広がればと思います。

わからないこと、難しいこと、紹介してほしいことがあれば、TwitterやInstagram、Noteコメント欄にてメッセージお待ちしております。

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それでは、本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

プレスリリース:
Access: 2022/10/14

https://www.zakzak.co.jp/pressrelease/atpress/DZGKF75BSNO3HNSGNIT6SZCPLU/

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