#178 炎症から発がんへの経路。炎症性腸疾患から大腸がんへ。

更新日: 2023/02/23

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今回のエピソードでは、慢性的な炎症から発がんまでの経路について現在考えられていることをまとめていきます。炎症性腸疾患は、原因が定かではない炎症や潰瘍が腸において発生する疾患ですが、大腸がんの発症と関連することが報告されている疾患でもあります。そもそも、炎症は両刃の剣のような存在であり、急性か慢性かによって体に与える影響が変化してきます。特に、慢性的な炎症は体に悪影響を与えることが考えられており、がんとの関連も指摘されているのです。

それでは早速、炎症と発がん、炎症性腸疾患と大腸がんの関係について見ていきましょう!

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炎症から発がんへ

まずは、炎症の役割を確認します。炎症は、異物の体内への侵入(例えば感染症への罹患)や組織の損傷に対する体の働きです。炎症の生じる期間から、細菌感染といった比較的短時間の炎症を急性炎症、長期にわたる炎症を慢性炎症と呼びます。

急性炎症では、異物を除去したりする上で重要であり、感染細菌が取り除かれたり組織が回復することで消失します。一方、慢性炎症では、自己に対する免疫細胞の攻撃が加わることで、身体に悪影響を及ぼします。発がんにつながると考えられているのも、慢性炎症です。

炎症に関連する疾患と発がん

ここからは、炎症に関連する疾患と発がんについてお話します。Landskronらは、"Chronic Inflammation and Cytokines in the Tumor Microenvironment"において、慢性炎症と発がんの関係を免疫応答の観点からまとめています1)。

例えば、炎症性腸疾患は大腸がんに、ピロリ菌に由来する慢性胃炎は胃がん、アスベストや喫煙、感染症などによる炎症は肺がん、前立腺への大腸菌感染は前立腺がん、子宮内膜症には子宮内膜がんが対応します。炎症は、発がんのリスクファクターといえるでしょう。難病情報センターによると、炎症性腸疾患の一種である潰瘍性大腸炎を発症して7-8年すると大腸がんを合併するリスクが高くなることが報告されています2)。

炎症性腸疾患に見られるような慢性炎症とがんの発症を介在する要因としては、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインが考えられており、発がんとがんの進展に関係することが考えられています。

また、2017年の理化学研究所と兵庫医科大学の共同研究では、炎症性腸疾患を原因として発生する大腸がん=Colitis Cancerについてゲノムを解析したところ、散発性大腸がんと比較して変異が入っている遺伝子の種類に違いがあることが分かっています3)。具体的には、散発性大腸がん患者の多くについて変異が確認されるAPC遺伝子の変異はColitis Cancerの患者では少なく、代わりにRNF43やTP53と呼ばれる別の遺伝子についての変異が確認されています。RNF43は、がんに関連する細胞内のシグナル伝達経路に関係する遺伝子です。

このように、炎症応答と遺伝子変異が炎症性腸疾患患者では起こり、大腸がんの発症につながると考えられています。

ここまでに、炎症性腸疾患という病気そのものについて詳しくみてきました。次回からは、炎症性腸疾患と腸内細菌の関係に迫ります!

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本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

1) Landskron G, De la Fuente M, Thuwajit P, Thuwajit C, Hermoso MA. Chronic inflammation and cytokines in the tumor microenvironment. J Immunol Res. 2014;2014:149185. doi: 10.1155/2014/149185. Epub 2014 May 13. PMID: 24901008; PMCID: PMC4036716.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4036716/?report=classic

2) 難病情報センター, 潰瘍性大腸炎(指定難病 97), Access: 20230218, URL: https://www.nanbyou.or.jp/entry/62

https://www.nanbyou.or.jp/entry/62

3) Fujita, Masashi et al. “Genomic landscape of colitis-associated cancer indicates the impact of chronic inflammation and its stratification by mutations in the Wnt signaling.” Oncotarget vol. 9,1 969-981. 12 Dec. 2017, doi:10.18632/oncotarget.22867

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