#53 口の健康が腸の健康に関係?ジンジバリス菌とリーキーガットの可能性。

更新日: 2022/10/14

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現役の腸内細菌研究者がお届けする、腸内細菌相談室。
室長の鈴木大輔がお届けします。

口の健康は、腸の健康と関係していそうです。

今回は、口腔細菌であるPorphynomonas gingivalis (以下ジンジバリス菌と呼称)と炎症の関係について調査した研究をご紹介します。口腔細菌叢と腸内細菌叢の関係については、血行性の細菌定着などにより口から腸内への菌定着などが研究されています。本研究では、歯周病原菌であるジンジバリス菌の経口投与によって、体中に変化が起きてくる現象を観察しているので、ご紹介します!

この内容は、Podcastにてお楽しみ頂けます。

ジンジバリス菌について

まずは、今回の研究の主役であるジンジバリス菌についてまとめます。ジンジバリス菌は、口腔細菌の一種で、ジンジバリスの名前はgingiva(歯肉)に由来しています。ジンジバリス菌は偏性嫌気性細菌で、主にタンパク質を基質としていることから強力なタンパク質分解酵素を産生・分泌します*1。

この細菌自体は慢性歯周炎に罹患した患者の歯周からよく分離され、慢性歯周炎の重要な病原性細菌(Red Complex)とされています*1。

この細菌自体は、歯周炎以外にも様々な代謝性疾患と関連するとされており、現在研究が進んでいます。 

病原菌の経口投与からリーキーガットまで

研究の方法

本研究は、マウスを用いた実験を伴います。マウスには、C57BL/6Nというよく使われるマウスの6週齢雌マウスを使用します。このマウスに対してジンジバリス菌を経口投与する群とプラセボ群を用意することで、ジンジバリス菌の与える代謝や組織機能への影響を評価していきます。

検査項目は、グルコース抵抗性試験、回腸腸内細菌解析、歯周組織・肝臓組織・精巣上体周囲脂肪組織の解析、血清中サイトカイン測定、血清中エンドトキシン測定、肝臓トリグリセリド容量測定、遺伝子発現量測定など多岐に渡ります。

ジンジバリス菌の経口投与による炎症の惹起について

ここでは、本研究にて明らかとなった炎症に関する結果をまとめます。

  • ジンジバリス菌の経口投与により、炎症性サイトカインの血中濃度が増加

  • ジンジバリス菌の経口投与による歯周組織の炎症について、組織学的所見は確認されなかった。

  • 今回の実験期間では、ジンジバリス菌の経口投与による体重の差異は確認されなかった。

  • ジンジバリス菌の経口投与により、試験開始から15分後以降の血糖値に差が見られ、プラセボ群と比較して高くなっっていた。しかし、インスリンの血中濃度に変化は無かった。

  • ジンジバリス菌の経口投与により、精巣上体周囲脂肪組織へのマクロファージの浸潤が確認された。また、肝脂肪や中性脂肪の蓄積が肝臓組織にみられた。

  • ジンジバリス菌の経口投与により遺伝子発現量に差がみられた。

  • ジンジバリス菌の経口投与により、精巣上体周囲脂肪細胞について炎症関連遺伝子の発現レベル上昇、インスリン感受性に関する遺伝子の発現レベル低下が確認された。また、インスリン抵抗性に関連する遺伝子の発現レベル増大も確認された。インスリンシグナルに関する遺伝子の発現レベルに変化はみられなかった。

  • ジンジバリス菌の経口投与により、肝臓について炎症性サイトカインに関連する遺伝子、脂肪滴形成関連遺伝子、脂肪酸合成と糖新生関連遺伝子の発現量は増加、抗炎症機能に関連する遺伝子とインスリンシグナルに関連する遺伝子の発現量は低下していた。

ジンジバリス菌の経口投与による腸内環境や血中エンドトキシンへの影響

続いて、腸内環境と血中への影響です。

  • ジンジバリス菌の経口投与により、Bscteroidetesの相対存在量は増加し、Firmicutesの相対存在量は減少した。

  • ジンジバリス菌の経口投与により、小腸におけるアルカリフォスファターゼやタイトジャンクションに関する遺伝子の発現量が低下していた。大腸においては、炎症性サイトカインの発現レベルが増加していた。

  • ジンジバリス菌の経口投与直後3時間までについて、血中エンドトキシン濃度が増加していた。

総括すると、ジンジバリス菌の経口投与によって、体のあちこちで炎症シグナルがみられ、脂肪を蓄えるとともに血糖コントロール機能が低下し、腸内細菌の存在量変化と小腸にリーキーガットの傾向が確認され、血中エンドトキシンのレベルも一定時間増加するということです。

モデルマウスによる試験結果ではありますが、非常に示唆に富む結果では無かったでしょうか。

口の健康は腸の健康に繋がる

この論文から言えることは、歯周病原菌を侮るなかれ、ということです。口の中に歯周病原菌が繁茂することで、もしかすると体中の炎症を惹起し、様々な疾患を引き起こすことが懸念されるからです。

腸活をする方は、口腔環境について見直して見るもの良いかもしれません。

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それでは、本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

研究紹介の元論文

https://www.nature.com/articles/srep04828#citeas

Arimatsu, K., Yamada, H., Miyazawa, H. et al. Oral pathobiont induces systemic inflammation and metabolic changes associated with alteration of gut microbiota. Sci Rep 4, 4828 (2014). https://doi.org/10.1038/srep04828

その他

*1: ようこそ不思議な細菌の世界へ 口腔細菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス Porphyromonas gingivalis), 日本細菌学会, Access: 2022/10/14, http://jsbac.org/youkoso/porphyromonasGingivalis.html

http://jsbac.org/youkoso/porphyromonasGingivalis.html


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