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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、消化された食べ物に由来する栄養素が、腸管でどのように吸収され、そして全身へ行き渡るのかというお話をしていきます。前回のエピソードでは、腸管上皮細胞は、互いに密着結合や接着結合と呼ばれる細胞間の緊密な連携を行い、腸管バリアを形成することで異物を体内へ入れないことをお話しました。では、腸管バリアが存在する中で栄養はどのように吸収され、利用されているのでしょうか?
エピソードを終えるころには、栄養吸収の基礎を理解できるようになります。では、早速上皮細胞を覗いてみましょう!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
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まずは、上皮細胞について詳しく見ていきましょう。上皮細胞は、複数の上皮細胞と密着、接着を行い、上皮組織を形成します。そして、上皮細胞といえど、形態、機能などにより更に細かく分類することができます。形態の観点からは、薄っぺらい扁平状であれば扁平上皮細胞、円柱状であれば円柱上皮細胞、立方体に似た形状であれば立方上皮細胞と呼ばれます。また、それぞれの上皮細胞が重なり合って上皮組織を形成するか否かによって、一層の場合は単層、多重層の場合は重層と呼ばれます。
腸管上皮組織は、単層円柱上皮であることが知られています。ちなみに重層扁平上皮の場合は、私達の皮膚などの外部と物理的に強い接触がされる器官に見られます。
ということで、栄養吸収の要は単層円柱上皮となります。単層円柱上皮からは、どのように栄養素が吸収されるのでしょうか?
まず、栄養が細胞の中を通るのか外を通るのかによって、経細胞経路と傍細胞経路に分類されます。経細胞経路では、疎水性の分子の場合は細胞膜の直接透過、親水性の分子は細胞膜の輸送タンパクを介して、上皮細胞に侵入し、次々に輸送されていきます1)。
一方、傍細胞経路では、細胞間の密着結合(タイトジャンクション)を通り抜けて栄養が組織側へ拡散していきます。え、密着結合を栄養が通り抜けちゃうの?と思った方。その違和感はごもっともです。しかし、前回はあくまでも"腸の管腔から組織の中に溶質が自由に漏れ出し、拡散するのを防いでいます。"という表現を密着結合には使いました。自由にというのが肝で、一部の分子は通り抜けることができるのです。傍細胞経路については、実は現在も研究途上ですが、ポア経路とリーク経路という溶質に依存して異なる経路の存在が考えられています2) 。
このいずれかの経路によって栄養が毛細血管に取り込まれます。そして、栄養は全身への旅に出ます。
腸の毛細血管は、互いに合流してやがて太い血管に集約されていきます。具体的には、十二指腸、空腸、回腸、上行結腸の毛細血管は上腸管膜静脈、下行結腸、S状結腸の毛細血管は下腸間膜動脈に集約されます。これらの腸管膜静脈は更に、脾静脈、左(ひだり)胃静脈と合流して、肝臓の直前で門脈となります。門脈に集約された血管は、肝臓へ向かい、栄養の代謝が行われます。
そして、肝臓を出た栄養が全身へ向かっていきます。これが、腸管で栄養が吸収されてから全身へ向かうまでの流れです。
いかがでしたか?栄養の吸収って、実は色々な仕組みが絶妙に機能して行われていることをご理解いただけたら嬉しいです。以上、腸管で栄養が吸収されてから全身へ行き渡るまでの過程についてお話しました!
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本日も一日、お疲れさまでした。
1) 小酒井 貴晴, 腸管上皮における栄養機能的化学物質(ポリフェノール)の輸送と認識そもそも,ポリフェノールって吸収されるの?, Kagaku to Seibutsu 55(6): 426-433 (2017).
https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=809
2) 大谷 哲久,古瀬 幹夫, タイトジャンクションの構造・機能連関の新しい視点, Journal of Japanese Biochemical Society 92(5): 731-734 (2020)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2020.920731.
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2020.920731/data/index.html