こんばんは。腸内細菌相談室の鈴木大輔です。
本日は、腸内環境と睡眠の密接な関係について、慶應義塾大学医学部のレビューを元にお話します。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/31/3/31_143/_article/-char/ja/
入江 潤一郎, 伊藤 裕, 睡眠と腸内細菌叢, 腸内細菌学雑誌, 2017, 31(3), 143-150.
今回は、睡眠とは何か、という問に対する答えを示します。
次回は、睡眠と腸内環境の関係をお示しします。
最後まで、お付き合いいただけると、とっても嬉しいです。
この内容は、Podcastによる音声でもお楽しみ頂けます。
https://open.spotify.com/episode/5S4RFIjg2YNVI8lwLSW0pe
睡眠は、私達の人生にとって大切な行為です。
習慣的に8時間の睡眠を取る方の場合、人生の33%は睡眠なのです。
目を閉じ、私達の意識が無い睡眠の間、それでも体はせっせと動いています。疲労を回復したり、記憶を整理したり、その恩恵は計り知れません。
ここでは、視点を変えて睡眠はどのように制御されているか、ということについてお話します。夜に寝る。ある程度決まった時間に起きる。これらがどのようにして起こっているのか?という視点です。
睡眠は、大きく分けて2つの要素で構成されます。
ホメオスタシス
時計遺伝子による概日リズム
難しい単語が出てきましたが、ここではゆっくり解説します。
ホメオスタシスは、生物の恒常性を表す単語です。
言葉で説明すると、次のようになります。
生き物は、体内の環境を一定に保つ必要があります。わかりやすいのは体温です。体温が乱れてしまうと、熱中症や低体温症、他にも様々な不調をきたします。だから、汗をかいたり鳥肌が立ったりするのです。
このように、移ろう体外の環境に対して、体内の環境を一定に保ち、生きようとする性質こそが、生物の恒常性なのです。
睡眠も、ホメオスタシスの制御を受けます。
具体的には、睡眠負債による睡眠の制御です。睡眠不足の日が続くと、うたた寝をしてしまったり、ぼーっとします。判断力や記憶力も低下します。そして、眠いという感覚によって、生物はホメオスタシスを保とうとするのです。
睡眠負債の具体例については、ポッドキャストにてお届けします。
(結論だけお話すると、睡眠負債の正体はとある物質です。)
以上のように、睡眠負債とそれに伴うホメオスタシスが、睡眠を制御しています。
体内時計、腹時計という言葉があります。もちろん、実際に体の中で秒針と分針がぐるぐるしているわけではありません。
ここでは、時計遺伝子という時計の機能をもった遺伝子が登場します。
Chrono、Period、Timelessなど、カッコいい名前ばかりです。
時計遺伝子の仕組みは、以下が参考になります。
時計遺伝子の協調で、概日リズムが生まれます。概日リズムとは、時間の経過に伴うホメオスタシスの推移です。具体的には、時間によって血圧や体温などが変化します。
脳の中では、視床下部の一部(視交叉上核)が、時計遺伝子の機能によって概日リズムを制御してると知られています。
体内のホルモンバランスなど、ホメオスタシスの多くは脳が担っています。だから、中枢に据え置かれた神経なのです。
そして、概日リズムは肝臓や消化管などの臓器にも存在することが知られています。腹時計とは、言い得て妙ですね。特に、30%の腸管の遺伝子は、概日リズムの中にあると報告されています。これは、どのようなことを意味するのでしょうか?
現代における睡眠は、大きな邪魔を受けています。以下が、主要因です。
電気の開発
東西をまたぐフライト
シフトワーク
睡眠のリズムが崩れると、概日リズムに影響を与えます。生活リズムが乱れた状態です。
人間には、ある程度代謝の柔軟性が備わっているからこそ、大きな変化には耐えられるが、小さな変化の蓄積には弱いです。少しの睡眠不足の蓄積が、最終的には腸管の活動にも影響を与えるのです。
さて、腸管は腸内細菌の住処です。
ここから、睡眠ー腸管ー腸内細菌の関係がぼんやりと浮かび上がってきました。次回は、本論文の主題である睡眠と腸内細菌の関係に迫ります。
現在、Twitter、Instagramにて、①腸内細菌、②腸内環境、③腸活に関する質問を募集しています!沢山の質問、待っています。
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それでは、本日も一日、お疲れさまでした。