#98 浮かぶウンチと沈むウンチ。決め手は腸内細菌叢。

更新日: 2022/11/28

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毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードでは、糞便の比重を決定する要因として腸内細菌叢が重要であることを突き止めた研究についてご紹介します!糞便の比重を腸内細菌叢が決定するということは、つまりウンチが浮かぶか沈むかの鍵を腸内細菌叢が担っていることを意味します。この研究は、Aalamらの"Genesis of fecal floatation is causally linked to gut microbial colonization in mice"という論文に報告されています。

では、ウンチが浮かぶのはどのような原因が関係しているのか?研究の内容に迫っていきましょう!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx

FMTにより因果関係を特定する方法

今回の研究では、マウスを用いた実験を行っていきます。使用するマウスは、腸内細菌が生息している従来マウス、従来マウスと年齢が同じノトバイオートマウス、そしてヒトやマウスの腸内細菌を移植したFMTマウスです。今回のノトバイオートマウスの場合は、無菌状態に保たれた無菌マウスを指すとしていました。FMTは、糞便微生物移植と呼ばれる手法で、別の生物の細菌叢を移植する手法を指します。

ノトバイオートマウスとは、保有している細菌が明らかなマウスのことを指し、腸内細菌に関連する実験でよく用いられます。ノトバイオートマウスや無菌マウスについては、#69でもお話しているので、気になる方は是非チェックしてみてください!

https://note.com/chonai_saikin/n/n7e5f69ab2229

これらのマウスが排泄する糞便について、比重や顕微鏡観察、ショットガンメタゲノムシーケンスを通して分析し、特徴を調査していきます。

特定のガス発生性腸内細菌が糞便の浮き沈みには重要

PCR分析や顕微鏡観察、DNA含有量の調査

まずは、各マウスの糞便中に細菌がいるかどうかを、PCR分析により確認していきます。結果、無菌マウスにおいては細菌の存在が確認されず、一方FMTマウスを含めたマウスについては細菌の存在が確認されました。電子顕微鏡による観察でも、無菌マウスでは細菌の存在が確認されず、その他のマウスについては細菌の存在が確認されました。

また、FMTを受けたマウスの糞便中DNA含有量を調査すると、ヒトからのFMTを受けたマウスと比較して、マウスからのFMTを受けたマウスについてのDNA含有量が多い結果となりました。これは、種をまたいだFMTよりも、同種間のFMTのほうが腸内細菌叢が定着しやすいことを示唆しています。無菌マウスからも、微量ながらDNA含有が確認されましたが、これはマウスに由来するものであると考えられます。

糞便の比重を調査

続いて、糞便の比重を調査していきます。結果、無菌マウスの糞便の比重は大きく、従来マウスやFMTを受けたマウスの糞便の比重は小さいことがわかりました。このように、無菌マウスと腸内細菌叢を保有するマウスでは、糞便の比重について性質が異なることが示されました。また、FMTを受けた無菌マウスについても比重が小さくなり、腸内細菌叢を保有するマウスと同様の値を示したことから、腸内細菌叢が比重に影響を与える原因になっていることが示唆されました。

ガス発生性の細菌を確認

最後に、糞便の比重に関連するガス発生性の細菌をメタゲノム解析により調査していきます。結果、Bacteroides ovatusやBacteroides fragilis, Bacteroides uniformisを含む13種類の細菌が特定されました。特に、B. ovatusを含むBacteroides属が多く含まれており、これらの細菌の量は従来マウスやFMTマウスによってかなり変化するとのことでした。

今回、同定されたB. obatusやuniformisは、炭水化物の発酵によるガス生成と鼓腸症患者のガス排出に関与しており、マウスとヒトの間で糞便ガス生成の微生物のメカニズムが同じであることが示唆されています。

ウンチの浮き沈みから分かる腸内細菌

今回紹介した研究は、ウンチの浮き沈みという私達に密接な現象について、腸内細菌叢との関係を明らかにしてくれた興味深い論文でした。ぷかぷか浮いているウンチをみたら、ぜひBacteroides属の菌たちについて思い出してあげてください。

以上、浮かぶウンチと沈むウンチ。決め手は腸内細菌叢であるという研究についてお話しました。

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本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

Aalam, S.M.M., Crasta, D.N., Roy, P. et al. Genesis of fecal floatation is causally linked to gut microbial colonization in mice. Sci Rep 12, 18109 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-22626-x

https://www.nature.com/articles/s41598-022-22626-x#citeas

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