現役の腸内細菌研究者がお届けする腸内細菌相談室。
本日も、鈴木大輔がお届けします。
本日お届けする内容は、2022年の順天堂大学と慈恵大学病院の共同研究で、乳酸菌の摂取により便秘を緩和する研究です。今回の文献は、文末に記載します。
今回のお話は、ポッドキャストでもお楽しみ頂けます。
https://open.spotify.com/episode/5bp32YKw0x1y3JzZzTeAu7
慢性便秘症診療ガイドラインによると、便秘および便秘症の定義は以下の通りです。
排出するべき糞便の十分量、快適な排出は個人差があると思います。愛知県薬剤師会では、1日3回から1週3回程度の回数、1日の量としては100-200gなら正常範囲としています。
以上の値は参考値ですので、ご自身の体調に不調があるか無いかを判断基準にすると良いと思います。
便秘の状態にあり検査や治療が必要にある病気が便秘症です。便秘症は直ちに生命を脅かすものでは有りませんが、生活の質を下げる点を考えると、重要な健康福祉上の課題です。
ちなみに、厚生労働省による2019年の発表では、男性で25.4%、女性で43.7%が便秘であるとされています(参考:厚生労働省)。大体3人に1人は便秘です。
便秘の要因は様々ですが、ここでは腸内細菌に注目します。
プロバイオティクスに用いられる株について、特定の消化管ペプチド経路の調節を介して便秘を改善することが報告されています。
従来の試みでは、単一株を便秘のマウスに投与する研究が多いです。今回の試みでは、プロバイオティクス(乳酸菌5種類:Lactobacillus acidophilus LA11-Onlly, Lacticaseibacillus rhamnosus LR22, Limosilactobacillus reuteri LE16, Lactiplantibacillus plantarum LP-Onlly, Bifidobacterium animalis subsp.lactis BI516)を組み合わせて摂取することを検討しています。
乳酸菌5種類と生理食塩水を混合したものをマウスに投与しました。ここでは、低用量と高用量の群を用意しました。
便秘においては腸管の運動性が重要になります。そこで、本研究では小腸の全長に対する活性炭の前進の割合(ここではスコアと呼称します)。
プロバイオティクスの投与後、低用量群および高用量群の便秘マウスは、スコアに有意な改善が示されました。これは、プロバイオティクス化合物による処置が、腸の運動を効果的に改善することを示しています。低用量群と高用量群との間には、スコアに有意な差はなかったそうです。
また、菌の定着はプロバイオティクスにおいて重要な課題です。
結果、菌の定着について異なる結果が得られました。
L. acidophilusは長期間マウス腸内にコロニー形成できない
L. plantarumは、低用量と高用量の両方で存在量が増加:コロニー形成は低濃度でより良好であった
高用量のグループでL. rhamnosusの存在量が増加
L. reuteriは短期間しか腸内に定着しない
B.lacticは、低用量では徐々に増加。高用量ではB. lacticの腸管内コロニー形成能は低用量群ほど良好ではない
ここでの結論は、以下の通りです。
腸の運動性がプロバイオティクスによって増加した
プロバイオティクスを構成する菌によって、腸内への定着は異なる
また、20日以上は乳酸菌の投与をしているので、継続した摂取が重要であることが分かります。
この研究に対する疑問点は、数ヶ月後にも果たして腸管の運動性が維持されているのか、という点です。
便秘症の方の腸内には、ラクトバチルス属菌、ビフィズス属菌が少ないことが分かっていることから、今後便秘がプロバイオティクスによって解決される日が来るかもしれません。
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それでは、本日も一日、お疲れさまでした!
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8838973/
He Y, Zhu L, Chen J, Tang X, Pan M, Yuan W, Wang H. Efficacy of Probiotic Compounds in Relieving Constipation and Their Colonization in Gut Microbiota. Molecules. 2022 Jan 20;27(3):666. doi: 10.3390/molecules27030666. PMID: 35163930; PMCID: PMC8838973.