#210 【便秘集中講義】最終回:便秘が無くなる未来。

更新日: 2023/03/27

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毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回は、便秘集中講義の最終回ということで、食品、プロバイオティクス、プレバイオティクスと腸内細菌や便秘の関係を振り返りつつ、便秘の未来について考えます。ウンチを出す理由についてお話をしてから、今回に至るまで全14回の講義を聴いたあなたは、便秘について広く深く理解ができるようになったと思います。是非、ここで得た知識を基礎に、便秘について考えたり、話の種にしてもらえれば幸いです。では、最終回スタートです!

本記事の音声配信は、下のプレイヤーからお楽しみいただけます!

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食品、プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクス

今週は、食品として茯磚茶(フクセンチャ)とワスレグサの一種、プロバイオティクスとしてBifidobacterium longum、プレバイオティクスとしてイヌリン、シンバイオティクスとしてBacillus coagulansとラクチュロース、Latilactobacillus sakeiとスタキオースについてお話しました。

発酵茶の中でも色が深い黒茶としてのフクセンチャは、腸内細菌叢の変化を起こすだけでなく、短鎖脂肪酸の産生量や炎症マーカーの減少、リーキーガット的になった腸内環境の改善、そして便秘の改善効果が確認されました。また、ワスレグサの一種であるユウスゲという植物は中国原産の美しい花を咲かせますが、便秘モデルマウスへの摂取により排便回数が増加したり、盲腸内細菌叢を変化させることが明らかとなっています。

このように、食品には腸内細菌叢を変化させ、同時に便秘に対して改善効果を示す場合があります。これは、食品に含まれる成分が腸内細菌叢の餌となることで、腸内細菌叢の機能が変化する場合もあれば、食品に含まれる成分自体が便秘を改善する効果がある場合もあります。

特に、食品の前者の機能に着目して、腸内細菌叢を栄養することにフォーカスしたのがプレバイオティクス、つまり腸内細菌叢の餌となる食物繊維などになります。イヌリンを始め、多くの食物繊維が、便秘へ良い効果があることが分かっています。

更に、腸内細菌叢を変化させる上では、細菌自体を摂取するプロバイオティクスもあります。今週は、65歳以上の高齢者を対象としたB. longum (ロンガム菌)の投与によって、腸内細菌叢を変化させ、排便頻度の増加や失敗の減少が統計的に有意に確認されています。

さらに、モデルマウスおよびヒトを対象とした、シンバイオティクスの投与と約1ヶ月の介入によって、便秘の症状は有意に改善されています。

このように、機能性便秘に対しての解決策は、現在多く見いだされており、これらの知見が社会に流通するのも時間の問題だと室長は考えています。

便秘が無くなる未来。

以上のお話を踏まえて、少し未来について考えてみましょう。シンバイオティクスや糞便微生物移植が普通のテックとなり、人々が腸内細菌叢とより良い関係を築けている、そんな未来です。

一過性単純性便秘のような、ストレスや環境の変化など、一時的で除去可能な理由に起因する便秘は、これからも付き合っていく必要があるでしょう。このような便秘は、薬剤を使わずとしても多くの場合改善が可能なためです。

一方、女性であることや、高齢であることがリスクファクターとなる機能性便秘の場合は話が変わります。日本人の多くの方が便秘に悩み、放置せざるを得ない生活を余儀なくされています。

このような、便秘はいずれ解消されると考えています。それは、今週お話をしてきた実験結果たちが語っています。つまり、便秘に悩む方は劇的に減少し、快便の生活を営む方が劇的に増加する。そんな世界が、もうすぐくると、室長は考えています。

便秘は、多くのヒトが悩むからこそ、産学のセクターの大きな関心ごとでもあります。便秘に関する研究成果は日進月歩で増えていくので、今後も腸内細菌相談室では、引き続き便秘についてのトピックを取り上げていきます。

今後も世界の研究成果を、そしてその成果が実装された社会を楽しみにしていましょう!

以上で、便秘集中講義は終了となります。
第一回からお付き合いいただいた読者、リスナーの皆様、お疲れさまでした!2週間前のご自身と比べて、便秘の見え方が変わっていたら嬉しいです。

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次回は、先週参加してきました第96回日本細菌学会総会にて知った、興味深い研究内容について共有します!
本日も一日、お疲れさまでした。

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