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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
病原性集中講義の第6回は、感染症の統計と宿主要因についてお届けします。これまでに、免疫機能の働きについてお話してきました。未知の抗原にも応答を示す免疫系ですが、免疫機能をもってしても病原体の侵入を許し、病原体が定着する場合があります。病気を起こす微生物が生物に定着することで起こる症状を感染症と呼びます (農林水産省の定義から)。今回は、感染症の統計と、感染症への罹患に影響する宿主の要因についてお話します。基礎的な内容から、病原性に近い応用の内容に近づいてきました。日本ではどれくらいの感染症罹患者が発生し、どのような要因が関係してくるのでしょうか。
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感染症として記憶に新しいのは、SARS-cov-2によるCOVID19、通称新型コロナウイルス感染症です。COVID19は2019年から現在に至るまで、人類の行動様式を変えさせるほどに大きな影響を与えてきました。
2023年4月6日時点での厚生労働省による統計では、1日の新規陽性者は8562人、陽性者数の累積は33500042人、死亡者の累積は74029人となっています(データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-, 厚生労働省、Access: 2023/04/07, URL: https://covid19.mhlw.go.jp/)。日本国民の約1/4が、この数年で罹患した感染症こそがCOVID19です。まさに、パンデミック=世界的大流行と呼ぶべき事象です。
現在、日本においては世界最高水準の医療インフラが整ったことで、多くの感染症を含めた病気に対して対応が可能となりました。前国立感染症研究所長の吉倉廣先生が記した微生物学講義録では、この状況を受けて次のように考察しています。
現在は、日和見感染症細菌や薬剤耐性菌などが院内感染でも問題となっています。
厚生労働省管轄の厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業にて2021年1月-12月に、全国医療機関の26.7%(2220医療機関)を対象とした調査では、細菌が分離された検体が4,536,822 検体のうち2,146,037 検体(47.3%)、分離された菌株は4,247,273 株でした1)。検体の由来は、呼吸器系検体が最も多く26.85%、ついで血液検体の25.0%、尿検体の20.4%、便検体の8.3%、骨髄検体の1.3%、その他で18.2%となっています。
分離された細菌としては、血液からE. coliやS. aureus、S. epidermidis、骨髄からはS. aureus、S. epidermidis、呼吸器系からはS. aureus、α-Streptococcus(溶血性レンサ球菌)、P. aeruginosa、C. albicansなどが検出されています。検体によって多様な菌株が分離されています。
では、免疫による異物の排除機構を突破される宿主には、どのような要因があるのでしょうか?その1つが免疫不全です。免疫不全とは、免疫機能が何らかの要因によって正常に機能しない状況を指します。
免疫不全が遺伝的素因による場合は原発性免疫不全症、特定の疾患への罹患や化学種への曝露に伴う場合は二次性(後天性)免疫不全症と呼ばれています。
いずれの免疫不全症においても、免疫系のどこかに異常が認められます。細胞性免疫に異常が認められる場合はT細胞の免疫不全や複合型の免疫不全、体液性免疫に異常が認められる場合はB細胞の免疫不全、食細胞系に異常が認められる場合は自然免疫を始めとした免疫不全、まれに体液性免疫で重要となる補体系に対しての先天的異常に伴う免疫不全も確認されます2)。
このように、宿主側の免疫不全によって、感染症に対する易感染者となります。
また、老化も易感染者となるリスクファクターです。老化によって、造血幹細胞からリンパ球への幹細胞分化能が低下し、これに伴って免疫機能と感染抵抗性が低下することが知られています3)。
宿主側には免疫機能が低下する、あるいは不全状態に陥る要因があり、これによって感染症に罹患するリスクが高まるのです。
ここまでに、宿主(主にヒト)の免疫機能と感染症についてのお話をしてきました。次回は、今週お話してきた免疫機能についてのお話を復習すると共に、感染症のもう1つの主役である病原性細菌、病原体につながるお話をします。
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今日も、お疲れさまでした。
また次回、お会いしましょう!
1) 公開情報 2021 年 1 月~12 月 年報(全集計対象医療機関), 院内感染対策サーベイランス 検査部門 【入院検体】, JANIS, Access: 20230407, URL: file:///Users/ds/Downloads/ken_open_report_202100.pdf
2) MSDマニュアル プロフェショナル版、微生物の侵入を助長する因子、宿主防御機構の欠陥, Access: 20230407.
3) 磯部健一, 伊藤佐知子, 西尾尚美 (2011), 老化と免疫, 日本老年医学会雑誌, 48(3), 205-210.
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/perspective_geriatrics_48_3_205.pdf