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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、"菌×食"のテーマに因んで、ヨーグルトと腸内細菌、ヨーグルトとヒトの健康について調査した研究をご紹介します。ヨーグルトといえば、タンパク質を豊富に含んだ栄養価の高い食品であり、同時に乳酸菌を含むプロバイオティクスとしても知られます。本研究では、ヨーグルトの腸内細菌に対する影響や、ヨーグルトに含まれる物質がヒトの糖代謝に対して良い影響を与えることを示しています。本研究内容は、Nature Communicationsに掲載されている、Danielらの"Gut microbiota and fermentation-derived branched chain hydroxy acids mediate health benefits of yogurt consumption in obese mice"から確認できます。
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
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では早速、今回の研究で注目されているヨーグルトの中の成分についてお話します。それは、branched chain hydroxy acids (BCHA)、日本語では分岐鎖ヒドロキシ酸です。ヒドロキシ酸とは、カルボキシル基をもつ短鎖脂肪酸などにヒドロキシル基が結合した化合物です。イメージとしては、短鎖脂肪酸と似た物質であるということを押さえていればOKです!今回の研究では、ヨーグルト中に含まれるBCHAが重要になってきます。
今回は、2型糖尿病のモデルマウスに対して凍結乾燥したヨーグルトを与えることで効果をみていきます。腸内細菌叢についての解析をしたところ、ヨーグルトの摂取によってβ多様性が変化していることが確認されました。β多様性とは、マウス間にある腸内細菌叢の多様性の大きさを示した指標です。ここから、ヨーグルトによって、マウスごとに腸内細菌叢が変化することが分かります。
また、ヨーグルトの摂取によって、Streptococcus属菌の存在量は増え、一方のPeptostreptococcaceae属菌の存在量は減ることが確認されました。特に、Streptococcus thermophilus菌は糞便および盲腸において高い存在量を示していました。腸内細菌叢の変化と同時に、腸内細菌の胆汁酸代謝の変化が確認されました。
続いて、腸内細菌叢の与えるマウスへの影響を確認するために、無菌マウスに対してヨーグルト摂取マウスのFMTを行います。FMTとは、糞便微生物移植という、糞便を介した腸内細菌叢の動物間移動です。FMTの結果、インスリンの感受性維持、腸内細菌叢の組成や機能の変化が関与することが示唆されました。
インスリン感受性の維持に対して腸内細菌叢の影響が示唆されたということは、今までにも多くの研究にて報告されているように2型糖尿病と腸内細菌叢の関連性を示唆しています。
さらに、肝臓における糖代謝に注目していきます。ヨーグルトの摂取は、腸内細菌叢のみならず、肝臓中の代謝産物に対しても影響を与えていました。特に、代謝の改善とBCHAの間には対応が確認されました。
BCHAは先述の通り、ヨーグルトに多く含まれる物質であり、牛乳の発酵時に生成されます。ここでは、BCHAが肝臓や筋肉のグルコースに対するインスリン作用を改善していることが示されました。さらに、食事によって肥満になったマウスの血漿中や組織中ではBCHA濃度が低く、食事によってヨーグルトを摂取することで濃度レベルが維持されたということです。
この論文では、結局何を言いたかったのか?それは、マウスを用いた実験により、①腸内細菌叢が変化すること、②ヨーグルトが糖の代謝機能を維持すること、③肝臓におけるインスリン抵抗性や肝脂肪症を予防すること、④有効成分がBCHAであることが示唆されたということです。
語弊を恐れずに表現すれば、ヨーグルトの摂取によりBCHAを摂取することで、インスリンに対する体の感受性が維持され、結果として脂肪ができにくくなるということです。
ヨーグルトは、乳酸菌やタンパク質の側面に注目されがちですが、分岐鎖ヒドロキシ酸という有効成分も含まれているんでんすね。
今回は、ヨーグルトの与える腸内細菌への影響、BCHAがヒトの糖代謝に良い影響を与えるということのお話でした!
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Daniel, N., Nachbar, R.T., Tran, T.T.T. et al. Gut microbiota and fermentation-derived branched chain hydroxy acids mediate health benefits of yogurt consumption in obese mice. Nat Commun 13, 1343 (2022). https://doi.org/10.1038/s41467-022-29005-0