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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、大腸がんのリスクファクターとなりうる疾患や生活習慣についてお話します。前回までに、大腸がんが発症する主要な経路として、腺腫-癌連関(Adenoma carcinoma Sequence)についてのお話を通して、大腸がんは腸管上皮細胞の細胞増殖関連遺伝子の変異が蓄積することで大腸がんが進行するというお話をしました。今回は、この遺伝子変異にまつわるリスクファクターについてお話していきます!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
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大腸がんのリスクファクターは、大きく分けて遺伝的要因、家族性要因、生活習慣を含めた環境要因に分類することができます。
大腸がんの発症のうち、2-5%は遺伝的要因によるものであると考えられています。遺伝的要因とは、自分の両親から変異の入った遺伝子を引き継ぐことで、生まれながらにして変異が蓄積されている要因を指します。
生まれながらにして変異が遺伝子に入っているので、細胞増殖の異常に繋がりやすい状態となり、結果として大腸がんを発症しやすい状態になっています。
遺伝的要因として知られるのは、Lynch症候群、家族性大腸腺腫症(FAP)、MUTYH関連ポリポーシス、過誤腫性ポリポーシスです。Lynch症候群は、ミスマッチ修復遺伝子に対する変異が入っており、大腸がん等の家族歴などからLynch症候群の発症が疑われます。家族性大腸腺腫症(FAP)は、大腸にポリープを多発する遺伝性の疾患で、良性腺腫の一部が悪性に転じることで大腸がんにつながることが考えられています。
大腸がんの約3割は家族性要因に関連して発症すると考えられています。家族性要因とは、変異の入る遺伝子が定かではないが、同一家系にがんになった人が多数みられるような状況を指します。この状況を家族集積性と呼びます。家族集積性は、環境要因の類似によるリスクの増大など、様々な原因が想定されます。
最後に、環境要因について紹介します。
大腸がんの6割から8割は散発性大腸がん、つまり遺伝的要因や家族性要因が確認されなかった人に認められる大腸がんであることが知られています。大腸がんに罹患する半数以上が、実は遺伝的要因以外の環境要因による支配を受けて大腸がんを発症すると考えられています。
環境要因としては、食生活や運動習慣などが考えられています。
関連して、リスクファクターとなりうるのは赤身肉や加工肉、アルコール摂取、肥満、喫煙習慣などが確認されています。
実際の大腸がんは、遺伝的要因、家族性要因、環境要因が相互に関連しながら発症につながると考えられています。そして、私達が制御できるのは生活習慣などの環境要因について、リスクファクターを減らすということになるので、食習慣や運動習慣を整えることが大切になるのです。
大腸がんの3つの要因について紹介しましたが、実はこれらと密接に関連するものがあります。それが、腸内細菌叢です。次回は、大腸がんと腸内細菌叢の関係についてのお話を、易しく解説します。
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