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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
病原性集中講義の第3回は、免疫細胞の分化について考えます。免疫系を学ぶ上で、様々な機能を持った免疫に関連する細胞が登場しますが、もとは共通の細胞から分化しています。分化のプロセスから免疫細胞を整理することで、免疫細胞間の関係なども明確になります。そこで、今回のエピソードでは、分化の観点から免疫細胞、免疫系を概観することを目指します。
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免疫細胞の分化を考える前に、分化とはどのような過程なのかおさらいします。分化とは、多分化能をもった受精卵を始めとする幹細胞が機能を獲得する過程を指します。
基本的に、ヒトを構成する細胞のもつゲノムは共通しています。したがって、ゲノムの遺伝子の発現量の違いによって、細胞は異なる役割を担うことになります。分化とは、幹細胞の細胞分裂の過程で発現する=タンパク質に翻訳される遺伝子の種類や量が変化する過程であり、これによって1種類のゲノムから様々な細胞機能が得られます。
免疫細胞は、造血幹細胞が分化することで生じます。
造血幹細胞は、骨髄にて生産されます。
骨髄にて生産された造血幹細胞が分化することで、赤血球、白血球、血小板になります。造血幹細胞は、血中の細胞成分にまつわる幹細胞なので、造血幹細胞(Hematopoietic Stem Cells)の名がついています。
さて、今回注目するのは造血幹細胞が分化して得られた白血球です。白血球は、顆粒球、リンパ球、単球に分類されます。これらは、いずれも免疫系を構成する重要な免疫細胞になります。
顆粒球としては、好中球、好塩基球、好酸球、肥満細胞が存在します。顆粒球は自然免疫を担い、細胞質内に顆粒と呼ばれる細胞傷害性の粒状の構造が存在し、殺菌性があります。中でも好中球は、貪食作用やサイトカイン産生作用から、今後も頻出の免疫細胞です。
続いて、単球についてです。単球は、自然免疫と獲得免疫をつなぐプロフェッショナル抗原提示細胞の前駆細胞として存在します。単球からは、マクロファージや樹状細胞が分化します。単球から分化した樹状細胞は、未熟樹状細胞と呼ばれ、抗原を貪食することでペプチドを分解し、抗原提示を行うとともに、リンパ節へ移動します。抗原提示を得た樹状細胞は成熟樹状細胞と呼ばれます。
最後に、リンパ球についてです。造血幹細胞からリンパ系前駆細胞に分化した後に、T細胞、B細胞、NK細胞などへ分化します。
リンパ系前駆細胞(幹細胞)が胸腺(Thymus)へ移動した場合にはナイーブT細胞となります。ThymusのTからT細胞と名付けられ、ナイーブとは抗原提示を受けていない感受性のある状態を指します。ナイーブT細胞に対して樹状細胞などから抗原提示が行われることで、様々なT細胞に分化します。
T細胞は、細胞表面に発現する糖タンパク質によって3種類に分類できます。①αβ型糖タンパク質とCD4糖タンパク質を細胞表面に発現しているT細胞、②αβ型糖タンパク質とCD8糖タンパク質を細胞表面に発現しているT細胞、③γδ型糖タンパク質を細胞表面に発現しているT細胞です。発現する糖タンパク質によって、分化後の機能が変化することが特徴です。
B細胞は、造血幹細胞が骨髄(Bone Marrow)における分化を経て産生される免疫細胞です。BはBone Marrowの頭文字に由来します。Th2細胞によるB細胞の活性化を経て、B細胞が形質細胞に分化することで抗体を産生します。
このように、造血幹細胞から多段階の分化を経てマクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞などの免疫細胞は形成されます。
次回は、病原性細菌=異物の認識に重要な抗原提示を含めた免疫応答の仕組みについて迫ります。以上、免疫細胞の分化についてお話しました!
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初期からの腸内細菌相談室のリスナーであれば、今回の内容が#44-48の駆け足の復習であることに気づいたと思います。知識の定着のきっかけになれば幸いです!
今日も、お疲れさまでした。また次回、お会いしましょう!