毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のテーマは、生活習慣と腸内環境の関係について詳しくお話するシリーズのラストとして、飲酒と腸内環境の関係についてお話します!お酒は、時に人間関係の潤滑油や、ひと時を彩る飲み物として、世界的に飲まれています。お酒に含まれるエタノールが、私達の体をめぐり、分解されなかったものが脳に到達することで酔います。エタノール自体には、ヒトに対する毒性があることから、ほどほどに飲むことが求められるわけですね。そして、エタノールが毒性を発揮するのはヒトだけでなく腸内細菌に対しても共通です。だからこそ、腸内環境や腸内細菌と、飲酒は密接に関係しているといえるでしょう。
今回は、腸内環境と飲酒の関係について論じたレビュー論文、ALCOHOL RESEARCH誌の"The Gastrointestinal Microbiome"からお話をお届けします!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx
まずは、病気と腸内細菌叢についてのお話から始めます。
ヒトが発症する病気は、感染症から生活習慣病など様々であり、原因も複雑で多様です。近年、腸内細菌叢が乱されることによって、様々な病気の発症リスクが高まることが示唆されています。
腸内細菌叢が変化する原因としては、高脂肪食、高糖質食、アルコール消費、プロバイオティクスやプレバイオティクスなどの食生活を始め、遺伝的な要因やストレスなどが考えられています。
そして、腸内細菌叢が変化するに伴って消化管、肝臓における生理が変化し、結果としてがんや代謝性疾患、心臓疾患、神経疾患に影響を与えると考えられているのが現状です。
病気と生活習慣の間には、腸内細菌叢が介在しているといえます。
腸内細菌叢が飲酒により変化することは、多くの研究によって確認されています。今回の論文では6つのマウスを用いた研究がまとめられています。
例えば、2011年Yanらの研究によると、3週間アルコールを含む餌を投与した結果、Verrucomicrobia門、Akkermansia属菌などの存在量が増加する一方で、Firmicutes門やLactobacillus属菌などの存在量は減少することが確認されています。
ヒトにおいても飲酒により腸内細菌叢が変化することを示唆する研究は数多く報告されており、例えばアルコール依存症患者の腸内細菌叢は健常者と比較して肝疾患の生むに関わらず大きく変化していることが観察されています。また、細菌叢の異常は血中のエンドトキシン濃度とも対応することが確認されており、腸管透過性の増加と腸内細菌の血中移行の可能性が示唆されています。また腸内細菌叢の変化と、全身炎症、アルコール性肝疾患などの組織損傷や病変にも関係があることが示唆されています。
腸内細菌叢は飲酒と病気の仲介者として重要な位置づけにあるといえるでしょう。
では、この論文では何を言いたかったのでしょうか?
飲酒は、腸内細菌叢を変化させ、腸管透過性を高める要因となりえます。腸内細菌叢の変化と腸管透過性の亢進に伴って、アルコール性肝疾患を始めとする病変や、血中へのエンドトキシンの流入による炎症が起こることが考えられています。
結論として、お酒は腸内環境にとって良くない生活習慣であるといえるでしょう。お酒は、腸内細菌のためにもほどほどにしましょう!
以上、飲酒の与える腸内環境への影響についてお話しました。
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Engen PA, Green SJ, Voigt RM, Forsyth CB, Keshavarzian A. The Gastrointestinal Microbiome: Alcohol Effects on the Composition of Intestinal Microbiota. Alcohol Res. 2015;37(2):223-36. PMID: 26695747; PMCID: PMC4590619.