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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
今回のエピソードでは、概日リズムと同調因子、概日リズムと代謝の関係についてお話します。前回のエピソードでは、概日リズムを生み出す分子生物学的なメカニズムである、時計遺伝子と時計タンパク質のお話をしました。今回は、時計遺伝子や時計タンパク質の発現量の周期性によって生じる概日リズムが、どのような要因を受けて変化するのか、そして代謝とはどのように関係しているのかお話していきます。
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
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前回のお話を復習すると、時計遺伝子によって作られるタンパク質の一部が、時計遺伝子の発現量を抑制するというTTFLという仕組みによって、約24時間の概日リズムが保たれているというお話をしました。
ここまでのお話を聞くと、体内時計の維持は細胞内で完結しそうな感じがしますよね。なぜなら、細胞内の遺伝子と、そこから作られるタンパク質でループが閉じているからです。しかし、実際にはTTFLに影響を与える外的要因が存在します。
時計遺伝子によって制御される概日リズムは、何度も行っているように、約24時間です。つまり、地球の自転周期とは微妙にずれています。ですから、TTFLが閉じたシステムであれば、毎日少しずつ体内時計がずれていきます。これでは、地球の自転周期に合わせて代謝を調節するという概日リズムの本来の役割を果たすことができません。
そこで、実際には体内時計の微調整が、日々行われています。時計がずれたら修正するというシステムも、生物は進化の過程で取得してきました。
それが、同調因子です。同調因子の影響を受けて、体内時計は微調整され、正確な概日リズムを刻むことができます。同調因子としては、光による明暗、社会的因子、食事、運動、温度や湿度などの環境条件が知られています1)。言い換えると、私達が生活を営むそのこと自体が、体内時計の時刻合わせのキッカケ=同調因子となっているのです。非常に良くできています。
例えば、朝日を浴びるなどの光刺激は視神経を介して視交叉上核、つまり中枢時計へと伝えられることで1)、時刻合わせに使われます。また、食事による血中インスリン分泌も同調因子となります。インスリンの分泌にともなって、時計遺伝子perの一種の発現量が増加することが報告されています2)。
概日リズムによって、様々な代謝が制御されています。例えば、抹消時計の重要性を示す一例として、肝臓や心臓にて発現する全遺伝子の約10%は、時計遺伝子によって制御を受ける時計制御下遺伝子であるとされており、これらは血圧、体温、ホルモン分泌などに関わるとされています3)。
概日リズムとエネルギー代謝として、運動によるエネルギー代謝、食事による熱生産効率などが考えられています。特に、食事による代謝の時間依存性は、時間栄養学と呼ばれる分野で盛んに研究されています。
このように、概日リズムは私達の生活習慣に散りばめられた同調因子による影響を受け、概日リズムは私達のエネルギー代謝などに影響を与えているのです。
語弊を恐れずに表現すれば、朝のあなたと夜のあなたは、別人なのです。これを踏まえると、私達のパートナーである細菌叢も、影響を受けそうですよね。
明日からは、概日リズムと腸内細菌叢の関係についてお話していきます!
以上、概日リズムと同調因子、代謝についてのお話でした!
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本日も一日、お疲れさまでした。
1) 概日リズム、薬学用語辞典、公益財団法人日本薬学会、Access: 2023/01/17, URL:
https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E6%A6%82%E6%97%A5%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0
2) 佐々木 裕之,柴田 重信 (2021), 時間栄養学的視点で健康な食生活リズム, Journal of Japanese Biochemical Society 93(1): 82-92 (2021)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2021.930082
3) 概日リズムとは?, 株式会社医学生物学研究所, Access: 2023/01/17, URL:
https://ruo.mbl.co.jp/bio/product/circadian/article/index.html