毎日19:30から、現役の腸内細菌研究者がお届けする、腸内細菌相談室。
室長の鈴木大輔がお届けします。今日は、耳寄りな情報を持ってきました!本当は次世代シーケンサーのお話をお届けする予定でしたが、急遽内容を差し替えてお届けしております!
本日は、腸内環境を理解する生物学の基礎シリーズをお休みして、日本で始まった大規模な腸内環境調査プロジェクトのお話をします!このプロジェクトでは、無料であなたの腸内環境を調べることができるので、興味のある方は、是非最後まで御覧ください!そして、参加してみて下さい!
このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!
https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx
今回紹介するのは、2022年の11月9日より開始した、日本人を対象にした大規模な腸内環境調査の募集についてです。募集ページはこちらからご覧に慣れます!
詳細はこちら:https://www.danonenutriciaresearch.com/thdmi-jp/
プロジェクトの名前は、ヒューマン ダイエット&マイクロバイオーム イニシアティブ(The Human Diets & Microbiome Initiative; THDMI)です。意訳としては、ヒトの食事と腸内細菌の情報を紐付けて、その関係を明らかにするプロジェクトです。腸内細菌相談室の鈴木大輔も運営に関わってきました。
このプロジェクトに関連して、今までにアメリカ、イギリス、メキシコ、スペインで食事と腸内環境の調査が行われてきました。アジアで最初の国として、今回日本の調査がスタートします。ワクワクです。
腸内細菌と食事の関連については、多くの研究にて報告されている通りです。食事で取った栄養素の内、私達が消化できない物質や消化しなかった物質、あるいは私達の分泌した物質が、腸内細菌の餌となります。また、それに伴い腸内細菌の増殖や減少、産生する物質の変化がおこり、これによって私達の体にも影響が与えられます。
食事はいわば、私達と腸内細菌を結びつける役目を担っていると言えるでしょう。
この研究が世界各国にて行われているのには理由があります。国によって遺伝的背景、食事を含めた生活習慣が異なるためです。ある国の調査対象=コホートに関する結果は、必ずしも日本人に当てはまるわけではありません。その国の遺伝的、文化的背景があなたの腸内環境を決定します。だからこそ、日本人のお腹の中をより良く知るためには、沢山の日本人を調査しなければならないのです。
このプロジェクト、すなわちTHDMIは2012年にスタートしたAmerican Gut Projectに端を発しています。American Gut Projectは、最も成功したクラウドファンディングの事例に数えられます。一般の方に向けて、腸内細菌叢の解析を提供したAmerican Gut Projectは、1000000$、現在の日本円に換算すると142,000,000円(2022年11月11日現在)のファンディングです。腸内細菌に対する、高い関心が現れています。
https://today.ucsd.edu/story/american_gut_project_crowdfunds_1_million_to_study_the_human_microbiome
そこから10年の時を経て、日本でも腸内細菌の調査が始まったのです。この調査については、腸内環境に関する研究のスーパースター、Rob Knightが話しているTEDトークにて詳しく知ることができます。この動画は、腸内環境や腸内細菌の研究者であれば、必ず1度は見たことがあるであろう動画です。
まだ見たことない方是非御覧ください!
https://www.ted.com/talks/rob_knight_how_our_microbes_make_us_who_we_are?language=ja
American Gut Projectには、別の側面として最も成功した市民科学(Citizen Science)の事例としても数えられます。市民科学とは、非専門家である市民が研究に参画する種類の研究で、American Gut Projectの場合は参加者がサンプルを提供する形で関わっています。
バイオインフォマティクス、すなわち情報学と生物学の学際領域では、解析対象となるサンプルが、偏りのない方法で、より沢山収集されることで良い解析ができるようになります。
これまでは、病院と提携するなどしてサンプルのデータが蓄積されてきました。しかし、疾患に罹っていない、健康な方の多くは病院の外側にいます。つまり、病気という異常に対するデータは蓄積されやすくても、健康という健常に対するデータは集めにくい傾向にあります。このようなバイアスを乗り越えられる可能性の1つが、市民参加型の市民科学なのです。
市民科学は、日本においてはまだ馴染みのない言葉です。しかし、今後重要になってくる研究スタイルであることは間違いありません。
今回スタートした日本でのキャンペーンには、American Gut Projectと異なる点もあります。つまり、国際間の研究機関、民間企業協力がある点です。これは、ヒトゲノム計画でみたような、広義の研究コンソーシアムといえるでしょう。ヒトゲノム計画の研究コンソーシアムについては、#80にてお話しております。
https://open.spotify.com/episode/6xqjaktqlVD3gVpNQYpwZ4?si=xRvnj0-BQdeTRvD5XXT32g
今回のプロジェクトでは、American Gut Projectを主催したカリフォルニア大学サンディエゴ校のKnightラボ、Danone Japan株式会社、そして東京工業大学の山田研究室が参画しています。
研究コンソーシアムと市民科学という、次世代型の方式によって、本研究は進行していきます。
最後に、今回の調査の概略をお話しております。
詳細な参加条件はこちらを御覧ください。
:https://www.danonenutriciaresearch.com/thdmi-jp/
今回は、皆様の糞便=うんちと食事記録を収集します。採便キットボックスを含めた必要なものは、登録認証を受けたすべてのヒトに、ご指定の住所までお送りされます。送料は全てはプロジェクト側で負担となるので、費用は無料です。
登録認証を受けた800名(登録順)には検査キットをお送りします。そのうち先着500名様には、ご自身の食事バランスと腸内細菌叢の状態を知ることができる検査結果をお送りします。
最後に注意点です。応募した全ての方が腸内細菌の解析を受けられるわけではありません。条件を満たした先着順で500名のみが受け取れます。数に限りがあります。質問がある場合は先程のサイトに記載のメールまでお願いします。
なぜこの記事を緊急で書いているのか。それは数に限りがあるからです。
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本日も一日、お疲れさまでした。