#106 キムチが与える大腸腺腫形成への影響。キムチを食べている人の腺腫形成が抑制。

更新日: 2022/12/06

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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードでは、言わずとしれた発酵食品であるキムチの健康効果についてお話します。キムチは、乳酸菌による野菜などの発酵を経て得られる食品です。そんなキムチには、大腸がんに関連する腺腫の形成を抑制する効果があることが分かってきました。そして、キムチを摂取している方には特有の腸内細菌叢が確認されています。今回のお話は、キムチの本場、韓国から"Fecal microbiota changes with fermented kimchi intake regulated either formation or advancement of colon adenoma"という研究に基づいてお話します!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx

食生活と大腸がん

まずは、食生活と大腸がんの観点からお話をしていきます。大腸がんは、日本において、現在最も罹患率が高いがんとして問題となっています。大腸がんは、定期的な検診をしなければ発見をすることが難しく、症状が出る頃には重症化しているケースも多いです。また、大腸がんがリンパ節転移の段階まで進行すると、5年生存率が18.8%とかなり予後が悪いのが特徴です。大腸がんの早期発見、予防法の確立は、現代社会において急務なのです。

近年、大腸がんには、特定の腸内細菌との関連が報告されています。腸内細菌相談室でも度々登場したFusobacterium nucleatumや、Parvinomonas micraなどです。未だ、特定の腸内細菌が与える大腸がんの発癌などの機序は発見されていませんが、特定の悪さをする細菌がいれば、これを除菌するなどの選択肢も考えられるようになります。

大腸がんと腸内細菌叢が関係するということは、大腸がんと食事が関連することを意味します。実際に、腸内細菌叢は食事によって変化しうることが、これまで様々な研究にて報告されています。ですから、食生活と大腸がんの関連性を考えることは、自然な論理ともいえます。今回の研究では、食生活の中でも発酵食品に着目して、キムチの大腸がんに対する影響を調査します。

発酵食品キムチの効果

今回用いるのは、韓国の発酵キムチです。日本で売り出されているキムチは非発酵食品かもしれないので、間違いには注意して下さい。キムチの容器に、キムチくんマークが記載されていれば、発酵キムチですのでチェックしてみて下さい。

先行研究では、腺腫を沢山生じるモデルマウスであるAPC/Min+マウスについて、キムチには腸炎関連のがんについて抑制効果があることが明らかとなっています。

今回は、正常な大腸、大腸腺腫、進行性の大腸腺腫をもつボランティア32名に対して、腸内細菌叢の解析を行うことで、キムチと大腸がんの関係を調査します。腺腫とは、大腸がんの前がん病変の一種であり、ポリープの一種です。腺腫の悪性度が高くなると、がんの進行過程に移行します。ですから、がんの兆候がないグループ、あるグループ、進行しているグループのボランティア32名の腸内細菌を調査していくという研究です。ここで、介入としては全ての参加者に対して、10週間、毎日100gのキムチを摂取してもらい、介入前後での腸内細菌叢をみていきます。

結果、3つのグループ間でα、β多様性に有意な差は確認されなかったが、キムチを摂取することによって多様性指標の増加が確認されました。また、細菌を解析をした結果、キムチ10週間摂取後のAcinobacteria, Cyanobacteria, Clostridium sensu, Turicibacter, Gastronaeophillales, Haemophilus pittmaは進行性大腸腺腫患者で多く、一方、Enterococcua Roseburia, Coryobacteriaceau, Bifidobacterium spp., Akkermansiaは少ないことが示唆されました。

では、今回の研究では何を言いたかったのでしょうか?

何を言いたかったのか?

それは、先行研究では腺腫形成の抑制効果がキムチにはあると明らかになっているとした上で、本研究ではキムチの摂取により腸内細菌が変化するんだぞ!と示した点にあります。つまり、キムチによる腸内細菌叢への介入と、腸内細菌叢の変化による腺腫形成、ひいては大腸がん発症の抑制に効果があるのでは無いか、と著者らは訴えています。

この研究には、まだまだ、荒削りなところも感じました。腸内細菌叢の代謝パスウェイ解析など、調査できることはあるからです。今後の研究に期待です。

今回は、 キムチが与える大腸腺腫形成への影響。キムチを食べている人の腺腫形成が抑制されるというお話についてお届けしました!

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参考文献

Park JM, Lee WH, Seo H, Oh JY, Lee DY, Kim SJ, Hahm KB. Fecal microbiota changes with fermented kimchi intake regulated either formation or advancement of colon adenoma. J Clin Biochem Nutr. 2021 Mar;68(2):139-148. doi: 10.3164/jcbn.20-121. Epub 2020 Dec 26. PMID: 33879965; PMCID: PMC8045997.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8045997/?report=classic

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